教職員も加入できるようになった 「個人型確定拠出年金(iDeCo)」とは何だろう?

2018年4月26日

2017年1月から「個人型確定拠出年金」(愛称iDeCo(イデコ))に教職員も加入できるようになりました。
この個人型確定拠出年金は、退職後の生活資金を準備するため、加入者自らの責任でお金を運用し増やしていく私的年金です。
そこで今回は個人型確定拠出年金(iDeCo)の注意点についてご説明します。

個人型確定拠出年金(iDeCo)って何ですか?

個人型確定拠出年金は、公的年金制度ではありません。個人年金保険(共済)や財形年金貯蓄のように、希望者が自由に加入する私的年金です。

  • 教職員は個人型確定拠出年金に月額5千円~1万2千円まで千円単位で積み立てられます。金融機関によって運用商品のラインナップや手数料も異なるので、金融機関選びも重要なポイント。
  • 個人型確定拠出年金は加入者自身が運用する自己責任の私的年金。余裕資金で加入することを忘れずに。

個人型確定拠出年金は、労働金庫、銀行、保険会社および証券会社等の金融機関(運営管理機関といいます)を選び、定期預金・投資信託・個人年金保険等、複数の運用商品の中からどれで運用するかを選択します。
60歳まで掛金を積み立てて運用できますが、投資信託のように“元本保証ではない”ものもあります。積立期間中の運用成績によっては、将来受け取る金額も変わってしまう可能性があるのでご注意ください。

 

個人型確定拠出年金(iDeCo)のしくみについて教えてください

個人型確定拠出年金には、次の税制上の優遇措置があります。

1. 掛金全額が所得控除 積立中の所得税や住民税が安くなる(年末調整等の還付金が増える)
2. 運用益は非課税で再投資 約20%の課税が免除されるたる、長期間の運用向き
3. 将来お金を受け取るときの税制優遇措置 一時金なら「退職所得控除」※
年金なら「公的年金等控除」
  • 退職手当が多いと退職所得控除額を超過してしまい退職手当は課税されて支給される。個人型確定拠出年金は退職手当と合算されるため、退職所得控除額を超過し課税されることがある。

税制優遇措置に「掛金全額の所得控除」があります。節税額を試算してみたところ図2のようになりました。

●図2:年額144,000円(月額12,000円)の掛金を積み立てた場合の節税額(年末調整等の還付金)は?

課税所得金額 所得税率 個人住民税率 年間の掛金額×(所得税率+個人住民税率)=還付金額
 195万円以下  5%  10%  21,600円
 330万円以下  10%  10%  28,800円
 695万円以下  20%  10%  43,200円

仮に年間28,800円の還付金を40歳から60歳まで20年間受けたとすると、合計で576,000円を受け取れます。図2のように税率の高い人ほど還付金額が多くなるので節税メリットになります。

将来お金を受け取るときの税制優遇措置に「退職所得控除」と「公的年金等控除」があります。この控除があると課税対象額が抑えられるので手取り額が増えますが、これは個人型確定拠出年金だけに「別枠」で用意されている制度ではありません。

そのため個人型確定拠出年金を受け取る際の税金は、一時金なら退職手当と、年金なら公的年金と合算して計算されるしくみです。

教職員の場合、退職手当だけで退職所得控除額を超過してしまうことがあります。そのような場合に個人型確定拠出年金はこの控除額が使えないため、課税対象額が半分になるメリットしか受けられません。
年金で受け取る場合も、公的年金未支給期間なら公的年金等控除が使えますが、公的年金受給後は、公的年金だけで公的年金等控除額を超過してしまい、課税されることがあります。退職手当や年金が、何歳からいくら受け取れるかにも関連してきます。

個人型確定拠出年金(iDeCo)の注意点は何ですか?

個人型確定拠出年金には、次の注意点があります。

1.60歳まで中途解約ができない

→ 災害などからの生活再建資金であっても認められない

2.申込み、積立中、将来お金を受け取るときも、口座管理手数料や振込手数料などがかかる

→ 手数料控除後のお金が元本として運用される

3.将来受け取るお金は個人の運用結果しだい。利益が出るかわからない(自己責任の投資)

→ 運用結果しだいでは元本を割り込みマイナスになる可能性も

4.加入年齢によってお金を受け取る年齢が決まっている(60歳~70歳までの間)

→ 例えば、50歳以下で申込むと60 歳~70歳、55歳で申込むと63歳~70歳

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個人型確定拠出年金は、積立中にお金が必要になっても原則として中途解約できないことが一番の注意点です。そして各種手数料も無視できません。

手数料は金融機関によって異なりますが、申込時に一律2,777円と金融機関によって0円~数千円、その他に口座管理手数料として月額500円前後などがかかります。
定期預金のように元本保証といっても、このような口座管理手数料などを控除した後のお金が元本として積み立てられていきます。

例えば月額12,000円の掛金で、初回は2,777円、毎月500円の手数料を負担すると、手数料控除後のお金(元本)は初回が8,723円、翌月からは11,500円になります。
年間144,000円を支払ったとしても、1年間に積み立てられるお金(元本)は135,223円です(掛金と元本の差額は、初年度がマイナス8,777円。次年度からはマイナス6千円)。

年末調整などの還付金が増えたとしても、その差額を貯蓄しなければ、還付金のメリットを家計が受けたことにはなりません。個人型確定拠出年金は、各種手数料以上の運用成績を出せないと、資産が目減りすることになりますので注意が必要です。

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、リスクと付き合いながら長期間運用する自己責任の金融商品です。他人に勧められたから加入するのではなく、ご自身がどのような方法で退職後の生活資金を準備するのか、ひとつの選択肢として考えてみてください。

 

(この記事は教職員共済だより162号(2017年4月発行)に掲載されたものを編集し、再掲載しています)