避難所と女性・LGBT

2019年3月4日

避難所では、どんな人たちに配慮が必要でしょうか。
すぐに思いつくであろう高齢者、子ども、障がい者以外にも、「女性」「性的少数者(LGBT)」への配慮が必要となってきます。

避難所で配慮が必要な人々とは

避難所となる学校には、さまざまな人が避難してきます。
避難所での生活は、大変厳しいものです。とくに、生活基盤や社会のセーフティネットが失われるため、高齢者、障がい者、妊産婦、傷病者、乳幼児などの要配慮者と呼ばれる人たちにより重い負担がかかることとなります。

要配慮者以外にも、女性、性的少数者(LGBT)など性差に起因する負担がクローズアップされています。

女性にとって、プライベートのない空間での雑魚寝、着替え、授乳という状況はストレスと不安そのものです。洗濯した下着を干せる空間など、女性に配慮した場所も欲しいものです。また「女性」というだけで、食事準備や清掃等を割り振られることもあります。

 

女性に配慮した避難所運営

避難所のあり方を見直して、
●更衣室や授乳室を設置
●洗濯物の干し場などで女性専用スペースを用意する
●女性用トイレを多めに設置する
といった取り組みを行うところも増えてきました。

また、生理用品や女性用下着などは女性が配布する、避難所の運営委員会には男女がともに参加する、といったことも行われるようになってきました。

 

性犯罪の発生を防ぐには

避難所では、残念ながら窃盗や、女性や子どもが被害者となる性犯罪も発生しています。
性犯罪を防ぐために、例えば次のような工夫も必要です。
●一人暮らしの避難者は、居住スペースを男性と女性に分ける
●家族の場合も、女性や子どもの隣に家族以外の男性が寝ないよう、就寝場所に注意する

また、更衣室、洗濯場、物干し場、風呂場、トイレなどを男女別にしたり、使用時間を分けたり、見張り番を立てたり、明るくするなど工夫します。

避難所全体で、性犯罪を許さない環境づくりを行う必要があります。

 

LGBTにどう配慮するか

避難所における性的少数者(LGBT)に対する対応はあまり進んでいません。
性的少数者とは多様な性自認・性的指向の人々のことです。
避難所では「トイレ、更衣室、入浴施設は使えない」「下着、生理用品など男女別の物資を受け取りにくい」など困った状況が生じる場合があります。

LGBTのサポート団体、岩手レインボー・ネットワークでは、災害時に性的少数者が直面する課題と対応策をまとめた『にじいろ防災ガイド』を作成しています。
避難所での困った状況について、「更衣室や入浴施設は、ひとりずつ使える時間帯を作る」「下着、生理用品、ヒゲソリなど、男女別の物資は、個別に届けられるような仕組みを検討する」などの対応策を提案しています。

教職員の方々は、避難所の運営に関わることがあるため、地域の自主防災組織の方々とともに、是非、女性や性的少数者やその人たちの災害時のニーズについて理解を深める機会を持っていただければと思います。

 

著者プロフィール

一般財団法人 防災教育推進協会常務理事 笠間正弘

一般財団法人 防災教育推進協会常務理事 笠間正弘

1961年宮城県生まれ。子どもたちが自ら考え行動する真の“防災力”を育むため、「ジュニア防災検定」や「防災寺子屋」などの防災教育事業を行っている。著書『わたしたちの防災』