避難所の食事情

2019年2月7日

避難所の食事といえば、乾パンなどの保存食を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
現在、避難所で主に提供される食事と炊き出しの留意点、さらに災害時に活躍する「食」の最新施設についてお伝えします。

避難所の食事情

避難所などに備蓄されている食料は、アルファ化米・ビスケット・乾パンなどが中心です。
災害時に電力やガス、水道などのインフラ機能が停止することもあるため、常温で保存できて調理しなくても食べられるものが選ばれています。

また、支援物資としての食料は、おにぎり、菓子パン、カップ麺など炭水化物が多く、空腹は満たせますが飽きてきますし、何よりも栄養に偏りが出てきます。

そんな時、炊き出しはありがたいもので、被災した方々の心もお腹もあたためてくれます。

 

 

炊き出しの基本と衛生管理の4つの原則

炊き出しの基本は、被災者に安全な食事を提供することであり、炊き出しを提供する立場の側には衛生管理が求められます。

被災地では、水が十分に使えず不衛生な環境になりがちですから、食中毒を起こさないよう注意しなければなりません。
ボランティアの方々も、家庭で行う料理とは違うことを認識して取り組む必要があります。

食中毒が起きる主な原因は、食品の常温放置、調理中の汚染、加熱不十分といわれています。予防するためには、次の4つの原則を踏まえましょう。

  1. 細菌をつけない
  2. 細菌をふやさない
  3. 殺菌する
  4. 細菌をもちこまない

ビニール手袋、マスクなどを着けて、食料を素手で触らないようにします。
食品を冷蔵庫やクーラーで保存し、できない場合は、調理品や封を切った食品は速やかに食べる必要があります。また十分に加熱しましょう。
体調の悪い人は、調理には関わらないようにします。

 

 

食物アレルギー対策のポイント

食物アレルギー対策としては、アレルギーの原因となる食品や成分が分かる図表を張り出すなどして、誰でもわかるようにします。

食事を提供するときにも、どのような食品や成分が使われているかが分かる図表を張り出し、食物アレルギーがないかどうか声かけを行いましょう。

 

「防災食育センター」をご存知ですか

防災食育センターとは、平時は学校給食を作る給食センターとして機能し、災害時は応急給食を作ると同時に避難所等としても稼動。また、防災教育、環境、食に関する学習機能も備えている、総合防災施設のことです。
災害時は、被災者へ提供する応急給食を作り、避難所へ提供します。
応急給食用の米や汁物用の乾燥具材を常備する災害備蓄庫・避難所等の防災機能を備えており、総合的な防災施設として重要な役割を果たすことが期待されています。

たとえば東京都福生市の防災食育センターは、2017年9月に本格的に稼動。2018年11月から団体・個人問わず施設見学を受付ています。
ここでは災害発生後4日目以降の最低3日間、市内の避難生活者(約1万5千人)に対し、1人あたり1日1回、おにぎり2個と温かい汁物を提供できるようになっています。

防災食育センターは福生市のほか、福岡県行橋市と遠賀町、北海道白老町、鹿児島県喜界町、宮崎県えびの市にあります。

著者プロフィール

一般財団法人 防災教育推進協会常務理事 笠間正弘

一般財団法人 防災教育推進協会常務理事 笠間正弘

1961年宮城県生まれ。子どもたちが自ら考え行動する真の“防災力”を育むため、「ジュニア防災検定」や「防災寺子屋」などの防災教育事業を行っている。著書『わたしたちの防災』