雪氷期の津波とは

2018年12月4日

2018年9月、北海道胆振東部地震(M 6.7)が起こり北海道で初めて震度7が観測されたのは皆さんの記憶に新しいところだと思います。
今回は将来発生が心配される北海道の地震、そして、雪氷期の津波に関する話題をとり上げます。

津波が起きる巨大地震発生の可能性

2017年12月、国の地震調査研究推進本部・地震調査委員会は「千島海溝沿いの地震活動の長期評価」を改訂しました。

そこでは、千島海溝で津波を伴うマグニチュード(M)8.8程度以上の巨大地震の発生が「切迫している可能性が高い」と発表しています。

千島海溝とは、カムチャツカ半島南部から千島列島南岸に沿って北海道南東部に至る海溝のことで、北米プレートに太平洋プレートが沈み込むことで形成されています。

北海道東部の太平洋側では、津波を伴う巨大地震が過去6500年間で18回発生しており、平均的な発生間隔は約340~380年(個々の発生間隔は約100~800年とばらつきがある)とされています。

17世紀に発生した前回の地震から400年経過しているため、地震が発生する可能性が高いとされ、30年間発生確率は「7~40%」と推計されています。

 

雪氷期の津波に注意

津波は大きな被害をもたらすことがありますが、冬季、流氷・河川結氷・港湾結氷・積雪などの雪氷現象を伴う地域では、特に住宅をはじめ、建物への被害がさらに大きくなると想定されます。

それは『パイルアップ』、『アイスジャム』と呼ばれる現象が生じるためです。

『パイルアップ』は、氷が高く積みあがる現象で、建物や構造物へ大きな力がかかり、建物損壊や倒壊・流失を招くとみられています。

『アイスジャム』は、狭い場所で氷が詰まって水の流れがせき止められることにより、急激な水位の上昇を招きます。

『パイルアップ』『アイスジャム』についてはこちらのPDFで写真つきの解説が読めます。

 

 

避難にも困難が生じる!

雪氷期には、避難にも問題が発生します。
普段通れる場所が、積雪によって通れなくなるため、避難経路が非常に限定されます。
その避難経路も、除雪状況が大きく影響します。

路面凍結や降雪による視界悪化なども避難を難しくし、時間が多くかかると考えられます。

津波の浸水を防ぐために、防潮堤や河川堤防を強化するなど津波に対応した防護ラインの整備が進められていますが、これらの理由で、避難が困難となることが予想されます。

積雪時の避難経路の確認を行い、防寒具も事前に用意するなど、一刻も早く避難できるように平素より準備しておくことが大切です。

著者プロフィール

一般財団法人 防災教育推進協会常務理事 笠間正弘

一般財団法人 防災教育推進協会常務理事 笠間正弘

1961年宮城県生まれ。子どもたちが自ら考え行動する真の“防災力”を育むため、「ジュニア防災検定」や「防災寺子屋」などの防災教育事業を行っている。著書『わたしたちの防災』