災害の最新事情

2018年11月6日

2018年は複合災害に見舞われる年となりました。
複合災害とは、複数の災害がほぼ同時または時間をおいて発生する災害のことです。いわば“弱り目にたたり目”災害です。
その災害を振り返ります。

続発する複合災害

7月の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)では、西日本を中心に多くの地域で河川の氾濫や浸水害、土砂災害が発生し、死者数が200人を超える大きな災害となりました。
豪雨のあと被災地を襲ったのが猛暑です。水害や土砂災害の被害にあった住宅では、家財道具の運び出しや土砂のかき出しなど片付けに追われましたが、連日の猛暑が復旧作業をする人々を苦しめました。

教職員共済だより168号の感想より

7月の西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市真備町、ここは妻の郷里であり、私にとっては第二の故郷ともいえる場所だった。
7月7日の朝、テレビのニュースで水没した真備町の姿を見た時は、一瞬自分の目を疑った。見なれた風景が一変していた。
一人暮らしをしていた義母は早めに避難していたので幸い無事だったが、平屋の家は屋根の上まで水に浸かり、本当に危機一髪だったと言っていた。

すぐに妻を現地に向かわせ、私も後から追いかけた。
義母は思ったより元気だったが、浸水した家の片付けは想像以上に大変だった。
猛暑の中、散乱した家財道具を外に出し、畳をはがし、床に溜まった泥を掻き出す作業は難儀を極めた。
マスクを二重にしていても、悪臭が鼻をついた。

全てを片付けることはできなかったが、義母の身体のことを考えて、一先ず千葉に連れて帰った。
今はこちらでゆっくり休ませてあげたい。
(東京都・中学校勤務 S様)

 

 

ブラックアウトも発生!

9月の北海道地震(北海道胆振東部地震)では、厚真町で周辺の山一帯が土砂崩れを起こす非常に大規模な土砂災害が発生しました。
直接の原因は地震ですが、7月の大雨や8月の台風20号、9月の台風21号と継続的に大雨が降っていたことが、土砂災害の規模を大きくしたとみられています。

また、北海道を襲ったこの大地震により、北海道全域で停電するという“ブラックアウト”(大規模停電)も日本で初めて起きました。
東日本大震災のときは、ブラックアウトを回避するため、東京電力は計画停電を行いました。覚えている方もいるのではないでしょうか。

教職員共済だより168号の感想より

先日の台風24号により、我が家でも3日間の停電とカーポートの屋根の破損という被害がありました。
ありがたいことにこれまで避難所にお世話になるとか、自分の勤務校が避難所になるとかいった経験はありません。しかし他人事ではありません。被災者の立場に立った避難所のあり方について考えることの大切さを実感しました。
ちなみに我が家では、3日間の停電を、息子が半年前に購入したEV車で乗り切りました。
(静岡県・小学校勤務 H様)

 

 

要警戒の「ため池決壊」

あまり知られていませんが、災害時に警戒したいのが、ため池の決壊です。
東日本大震災では福島県で3か所のため池が決壊し、8人の死亡・行方不明者が出ました。2017年の九州北部豪雨では9カ所のため池が決壊し、今夏の西日本豪雨でも28カ所のため池が決壊しました(うち「防災重点ため池」以外の決壊ため池数は25カ所 )。

ため池は全国に約20万か所あり、その多くは、水利組合・土地改良区・個人が管理しています。しかし農業者の減少や高齢化で維持管理が十分ではなく、ため池の老朽化が大きな課題となっています。

全国のため池の大半が西日本にあり、6割が瀬戸内地方にあります。(2014年3月調べ)
1位:兵庫県/43,245個
2位:広島県/19,609個
3位:香川県/14,619個

農林水産省では、決壊すると被害が出るおそれのあるため池を「防災重点ため池」と位置づけ、調査を進めるとともにハザードマップの作成を推進しています。

 

 

防災上、思わぬ障害に…

ため池のハザードマップが作成されることで、これまで“潜んでいた危険”が見えてきました。
ため池決壊が、人的な被害や住宅や農地への被害をもたらすばかりではなく、避難を阻むという危険性です。

津波や洪水で高台へ避難する際、避難経路が塞がれて高台へ行くことができないという事態になる恐れがあり、防災上、思わぬ障害となります。
住んでいる地域にため池がある場合は、こうした影響も考えながら避難経路を今一度確認しましょう。

 

 

初出:2018年11月10日配信メールマガジン
著:笠間 正弘/(一財)防災教育推進協会