スクールロイヤーって何?
皆さんは「スクールロイヤー」と呼ばれる弁護士を知っていますか?
スクールロイヤーは直訳すれば「学校の弁護士」です。この言葉を文部科学省が初めて使用したのは2017年度予算概算請求で、いじめの予防や適切な解決に弁護士を関わらせる事業を試験的に一部の自治体に導入し、調査する事業が始まりました。
そして、2019年2月には、千葉県野田市で発生した虐待事件を契機に、文部科学大臣が児童虐待の対応に関してスクールロイヤーを各地の学校に配置することを検討すると発表しました。このように、スクールロイヤーは今、最も注目を集める教育政策の1つにもなっています。(2019年10月時点)
このような動きを受けて、日本弁護士連合会も2018年に「スクールロイヤーの整備を求める意見書」を発表し、スクールロイヤーは「子どもの最善の利益」を実現するために教育現場からの相談を担当する弁護士であることを示しました。
しかし、実はスクールロイヤーは以前から、一部の地域や学校で導入されていました。そもそも学校で発生した事件について弁護士に相談する必要がある場合、公立学校であれば自治体の顧問弁護士に、私立学校であれば学校法人の顧問弁護士に、それぞれ相談していました。しかし顧問弁護士は、「今にも裁判になりそう」といった、よほどのことでなければ学校現場からの相談に応じてくれません。
そのため、現場の先生たちにとって顧問弁護士はとても遠い存在だったのです。そこで、一部の地域や学校では現場の先生ができるだけ相談しやすい弁護士を配置するために、スクールロイヤーと呼ばれる弁護士を導入したのです。
ブームになって危惧されることも…
私は弁護士であり、クラス担任や部活動顧問なども担当する現役の私立高校教師でもあります。
2011年以前より弁護士資格を持つ教師という立場で、スクールロイヤー活動を行っています。また、同時に他の地域の教育委員会や学校法人のスクールロイヤーも担当しています。最近※の状況をみて、私は次のような点を危惧しています。
- すでに行われているスクールロイヤーの実情や効果をほとんど検証することなく、国が政策として導入しようとしていること。
- 最近※の「スクールロイヤーブーム」に乗じて、スクールロイヤーの経験がない弁護士らが「スクールロイヤー」と称して本を出版するなど、誇大な活動を行っていること。
※2019年10月時点
つまり、政府も弁護士業界も、子どもや現場の先生にとってスクールロイヤーがどのような影響をもたらすのか、必要な議論や経験を積むことなく、スクールロイヤーを学校現場に関わらせようとしているのです。
そこで、本連載の第1回ではまず、現状のスクールロイヤーのタイプと役割を検証し、具体的な事例で果たす役割の違いを紹介したいと思います。
スクールロイヤーを分類すると
一口にスクールロイヤーと言っても、そのタイプはさまざまです。なぜなら、スクールロイヤーには明確な定義がないからです。
この点こそスクールロイヤーの最大の問題点でもありますが、私は現状のスクールロイヤーを大きく次の3つのタイプに分類しています。まずは次の表をご覧ください。
| スクールロイヤー3つのタイプ | |
|---|---|
| 1.顧問型 |
現在のスクールロイヤーはほとんどがこのタイプ
|
| 2.職員型 |
弁護士資格を持った職員として教育委員会等が雇用
|
| 3.教員型 |
弁護士が教員として雇用され、学校で勤務
|
1の「顧問型」は、自治体の顧問弁護士との役割分担や差別化が重要になってきます。
しかし学校現場との関わりは、自治体の顧問弁護士とさほど変わらないほど希薄です。特に学校にほとんど来ない「顧問型」スクールロイヤーは、そもそも「スクールロイヤー」という肩書を使用することに疑問すらあります。
2の「職員型」は、1よりも実質を備えていると考えられます。
なぜなら、「職員型」スクールロイヤーは教育委員会の職員という立場で学校を訪れる機会が非常に多いため、教育現場との関係が密接なだけでなく、教育委員会の内部で働くことで得られる情報量も「顧問型」スクールロイヤーよりはるかに多いからです。
3の「教員型」は、常に学校現場にいて実際に子どもと接しているため、子どもの最善の利益に直接貢献することができます。
しかし弁護士業界ではこの点が軽視されているのか、「教員型」スクールロイヤーはもう何年間も私以外に全く現れていません。
具体的な事案におけるスクールロイヤーの役割
では、スクールロイヤーは具体的な事案においてどのような役割を果たすのでしょうか。
「ある保護者から『子どもが教師から頭を叩かれる体罰を受けた。この教師を処分してほしい』という要求が学校にあった」という事案を想定してみます。
まず、「顧問型」の場合であれば、「当事者から事実関係を確認し、頭を叩いた事実が真実ならば『体罰』なので、何らかの処分と謝罪をすべきである」と助言するでしょう。しかし、ここで役割はほぼ終了です。
これに対し、「職員型」の場合であれば、当事者に対する事実関係の確認作業自体に関与することができるので、保護者が主張する事実の背景にある事情にも直接触れる可能性が出てきます。
当該教師、児童生徒、保護者の性格や普段の状況など「顧問型」では接することのできない事情に接することで、そのような事情を考慮して体罰の認定や処分の内容などを判断することになります。
さらに、「教員型」であれば、同じ教師の立場から当該事案ではどのような指導が現実的に可能であったかどうかを判断し、もし児童生徒の態度に反省や改善が見られないのであれば、スクールロイヤーが教員の立場で指導自体にも関与することになります。
つまり、弁護士としての法的視点だけでなく、教員としての教育的視点からも事案の適切な解決を検討することになるのです。
このことは、「教師をやったことがない人間や、現場を知らない人間があれこれ言うな」といった、経験主義や現場主義から生じやすい教師の反感を防ぐ意味もあります。
このように、一口にスクールロイヤーと言っても、実はタイプによって具体的な事案における役割はかなり異なることが理解できると思います。
そこで、次回からは、「教員型」スクールロイヤーの立場から、いじめなどの具体的な紛争実例をどのように解決していけばよいかを示していきたいと思います。
(この記事は教職員共済だより172号(2019年10月発行)に掲載されたものを再掲載しています)

