かぜでもないのに熱がある!? 尿路感染症を疑おう

2017年9月19日

小児の発熱の原因はさまざまあります。一番多いのは急性上気道炎で、いわゆる「かぜ」です。発熱を伴う病気は、珍しいものも含めると、その原因となる疾患は数え切れません。
今回は、その中でも頻度が高いのに見逃がされがちな、尿路感染症(膀胱炎や腎盂炎)についてお話ししましょう。

変だな、かぜでもないのに熱がある?!

かぜでもないのに熱がある。変だな、と思ったことはありませんか?
かぜ症状が無く、抗生物質を飲むとよくなる発熱を繰り返すときは、膀胱尿管逆流症などによる尿路感染を繰り返していることがあるので、注意が必要です。
この場合、発熱時は一度検尿をして、尿の中に白血球が増えていないか、尿の培養をして尿の中に細菌が増加していないかを見てもらうことが大事です。

小児科でみる尿路感染症は、一般に熱以外の症状が無く、特異的な症状はあまりありません。特に症状を説明できない乳幼児では、医師に「かぜですね」と見逃されることもしばしばあります。

尿路感染症は、上部尿路感染と下部尿路感染に別れます。わかりやすい区別としては、発熱の有無です。

下部尿路感染(膀胱炎、尿道炎)

膀胱炎や尿道炎は下部尿路感染に当たります。
発熱がないことが多く、症状を説明できる年齢になると、頻尿や排尿痛を訴えます。

検査所見は、尿の混濁がみられますが、血液検査などに異常値はあまり出ません。尿の混濁は、膀胱粘膜に感染を起こした菌をやっつけるために、増加した白血球と細菌のため濁ります。これを膿尿といいます。時に血尿が混ざるため、赤くなることもあります。検尿をして赤血球や白血球の数をみます。
尿の培養をすると基準値以上の細菌数が認められ診断されます。原因となる菌も培養で判明します。膀胱炎を起こした後、菌が腎臓に逆流していき炎症を起こすと、熱が出てきます。

上部尿路感染(腎盂炎、腎膿瘍)

発熱を伴うものは、上部尿路感染で、腎盂炎や腎膿瘍などがあります。
症状を訴えられる年齢だと、倦怠感、わき腹の痛み、腰背部痛などを訴えます。

腎臓は、血管の多い組織であり、体の奥の方の炎症でもあるので、血液検査での炎症反応が強く出ます。下部尿路感染同様に、検尿で血尿や白血球尿が見られ、尿の培養で、基準値以上の細菌数が検出されることで診断されます。

乳幼児では、症状を説明できないため、不機嫌だったり哺乳力が落ちたりと、その他の病気でも見られる所見しかないことが多いです。
生後6ヶ月くらいまでは男児に多く、その後、1歳を超えてくると女児が圧倒的に多くなります。尿道の長さが短い女児の方が、菌の侵入が起こりやすいと考えられます。

乳幼児での尿路感染症では、先天的な尿路奇形を合併していることが多く、また、1歳以上で尿路感染を起こす男児では、感染を繰り返さなくても、尿路奇形や構造異常を伴うことが多くみられるので注意が必要です。

原因菌は9割方が大腸菌です。その他は、やはり便中に存在する菌が多く、まれな菌が検出される場合は、尿路の奇形が強く考えられます。

最近は、急性巣状細菌性腎炎といって、血液検査で強い炎症が出るのですが、尿に白血球が増えるという所見が無く、腎臓に膿瘍性の炎症が認められるものがあります。CTや核医学検査で診断されます。腎盂炎などより瘢痕化(傷あとが残ること)しやすく、注意が必要な病態です。

感染の治療は、抗生物質の内服でよくなります。処方されたお薬は、主治医の指示があるまで勝手にやめず、最後まで飲みましょう。乳幼児で炎症が強い場合は、入院して点滴の抗生剤を使用して治療します。

気をつけたい「膀胱尿管逆流症」

尿路の奇形の中で多いのは、膀胱尿管逆流症といって、膀胱から腎臓に向かって尿が逆流することです。正常な人では逆流は起こりませんが、乳児では膀胱壁が薄いので生理的にも起こることがあります。
膀胱に菌が入ることは通常でも起こりますが、すぐ体外に尿と一緒に排泄されるので、熱を出すような感染は起こりません。しかし、尿が腎臓まで逆流して菌が入ると、腎盂や腎臓で感染を起こし、腎盂炎や腎膿瘍となり発熱します。
一度よくなっても、菌が尿とともに腎臓へ逆流するため、再び感染すれば熱を出します。

尿路感染症を繰り返していると、腎瘢痕といって腎臓の感染を起こした部分の組織が変化していきます。変化した部分は腎機能を失い、その範囲が広がると腎臓全体の機能が低下して、腎不全に至ることがあります。これを逆流性腎症といいます。

誰にも気がつかれずに逆流による尿路感染を繰り返し、小学生になって見つかった時は、すでに腎機能が低下し、腎不全になっていたという例も稀ですがあります。逆流があれば早期にそれを治し、尿路感染を繰り返さないようにすることが大切です。

尿路奇形を疑った場合の超音波検査やCTや核医学検査、逆流があるかどうかの検査は、施設によってできるところとできないところがあります。尿路感染症を繰り返す場合は、かかりつけの先生と相談し、必要に応じて検査のできる病院や専門医を紹介してもらうようにしましょう。

日ごろの注意

女児であれば、尿道と肛門が近いので排便した後お尻を拭くときは、後ろから前ではなく、前から後ろに拭くなどの注意が必要です。オムツの子は便が出たら、早めに交換してあげることも必要です。
逆流があるお子さんで幼児や小学生であれば、水分をよく摂らせておしっこを我慢させないようにします。残尿を減らすために、排尿したらもう一回尿をする、段階排尿というのも効果的です。

mini column 3日以上ウンチが出ない!

お子さんが3日以上排便しまないせんと、不安になりませんか?
でも、あまり心配する必要はありません。排便は生理現象なので個人差があり、一週間出なくても平気な子もいます。
夏場は汗をかき、体の水分量が不足すると便が硬くなり、便秘が助長されることもあります。冬場は寒くなり、水分をあまり取らなくなると同様のことが起こります。

乳児では、おなかのマッサージや綿棒で肛門を刺激すると効果がありますので、積極的に行いましょう。肛門刺激が癖になることはありません。むしろ、便秘が癖になるほうがやっかいです。

便秘による受診の目安は、

  • ミルクや母乳の飲みが落ちた
  • おなかが張った
  • 嘔吐がある
  • 排便時に肛門が切れて毎回血が出る

などです。

日ごろから水分をよく摂り、繊維の多いものや乳製品、柑橘系のものをよく摂らせましょう。

指導:キッズクリニック川口前川 院長 新実 了先生