甘くみてはダメ
「麻疹と風疹」、誰もが聞いたことのある、よくある病気という感覚があると思います。誰もがかかる病気という認識もあり、軽い病気と思われがちです。
しかし麻疹は昔、「命定め」とも言われ、現在でも1000人に1人が死亡する病気です。
恐ろしいのは、そもそも有効な治療薬がないということと、免疫力を下げるため脳炎、肺炎、中耳炎といった合併症を引き起こすことです。
私も、医者になるまでは軽く考えていた疾患ですが、実際医師となり麻疹が流行した年には、死亡例も経験しました。
恐ろしい病気、死ぬ病気であると痛感した経験があります。
小さいうちに罹っておいた方がいいの?
麻疹・水痘・流行性耳下腺炎(おたふく)・風疹は小さいうちに罹っておいた方がよいと思って、わざわざその病気の人に接触しに行った、という話しを耳にします。
実際に私が子どものころは、そうしたことが当たり前に行われていたものです。
免疫的には、罹った方が抗体の持続はあるのですが、合併症が怖い疾患です。
大半の人は治癒する病気ではありますが、罹らないに越したことはありません。くれぐれもご注意を!
ワクチン接種で罹患リスクよ、さようなら
それでは、これらの病気に罹らないようにするには、どうしたらよいのでしょうか。
それは、きちんとワクチン接種を受けることです。現在、麻疹と風疹は、予防接種法の改正で、2006年6月より麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)の2回接種が行われています。
MRワクチンは、定期接種と言って、通知が来て無料で受けられるものです。
水痘、流行性耳下腺炎は、任意接種と言って、通知は来ませんし自費で受けなくてはなりません。ただし、水痘と流行性耳下腺炎が軽い病気だから有料だというわけではありません。
予防接種は、罹るとよくない病気に対してあるものです。放っておいてよい疾患にはありません。
水痘も脳炎を起こしますし、流行性耳下腺炎も髄膜炎や難聴といった合併症のリスクがあります。ですから、これらも罹った方がよいとは言えません。罹らないように予防接種を受けることをオススメします。
水痘ウイルスは水痘治癒後も神経節の中に潜伏していて、免疫低下などを引き金に、帯状疱疹を発症することがあります。ただこの発症率は、ワクチン接種後と自然感染では、ワクチン接種後の方が低いようです。
mini column ワクチン接種の大事なポイント
ワクチンは2回受けなきゃダメなの?
MRワクチンは、1歳と5歳の2回接種となっています。
1回接種ですと、ごく僅かですが(5%程度)予防接種をしても免疫がつかないことがあります。また、流行の減少で麻疹の患者さんと接する機会が減り、免疫を持っている間にウイルスに接することで、体の中で抗体が再上昇する効果(ブースター効果)が期待できなくなっているためです。
こうなると、徐々に予防接種の免疫が低下して、流行時に感染してしまうということが起きます。これを防ぐために、2回接種が必要となります。
ここが怖い! 流産につながる妊婦の風疹罹患
風疹は、妊婦さんが罹ると先天性風疹症候群といって流産するリスクが高まります。
また、生まれてきた子どもに、難聴・白内障・先天性心疾患の発症が多くなります。特に妊娠12週までに罹ると危険性が高いので、注意が必要です。
妊婦さんに感染させないためには、妊婦さんが予防接種を受けておくのがもっとも重要ですが、周りの人も予防接種し、うつさないようにする必要があります。
mini column 小児科のかかり方
いつまでかかっていいの?
小児科は何歳まで受診していいの?という質問をよく受けます。
総合病院で内科と小児科が両方あるところでは、初診で、中学生までは小児科としているところが多いと思います。
慢性疾患などで小さいときから診てもらっている場合は、何歳までというきまりはありません。開業医さんなどは、小さいころからのかかりつけなら、「もうそろそろ内科だなあ」と言われるまでよいと思います。
かかりつけを作ろう!
小児科は他の科と違って、子どもの病気はもちろんですが、その他に健診や予防接種でも深い関わりを持ちます。時に、育児相談、子育ての悩みなども受けます。
長いおつきあいになれば、お子さんのデータが蓄積されていきますから、別の病気が見抜けたり、こんな症状のときには、この薬といった、その子にあった処方ができたりと、さまざまなメリットが生じます。ですから、ぜひ、かかりつけを作りましょう。
また、他の科で見るような疾患でも、小児ということで総合的に診察する部分は多いです。しかし、明らかな外傷や骨折に関しては、最初から外科や整形外科の受診をオススメします。
参考 小児内科 Vol.39 No.10 2007 特集予防接種Q&A
指導:キッズクリニック川口前川 院長 新実 了先生