だいじょうぶ?長い間、咳が止まらないけれど…

2017年2月22日

皆さんご存知の通り、風邪の主な症状は咳です。たいがいの風邪は1週間ぐらいでよくなりますが、長引く咳の中には、別の原因がある可能性がありますので注意が必要です。

3週間以上続く咳に注意

咳は、体に入り込む異物を外に出す生理的な防御反応です。気道などが炎症を起こし、免疫反応でウイルスや細菌をやっつけた結果、出てきた痰を体の外に出そうとするものです。

一概に止めてしまえばいいというものではありませんが、乳児や老人などは、免疫力や筋力も弱く、痰などがたまると呼吸が苦しくなったり、肺炎に移行したりすることもあります。
咳が続くと体力も使いますので、症状や年齢に合わせた薬を使うのは、悪いことではありません。医師の指示に従いましょう。

咳が長引く場合は、単純な風邪ではなく、その他の原因によることがあるので、注意が必要です。咳が出るという症状のみで病気を考えると、可能性のある病気はたくさんあります。
気道感染症のみならず、アレルギーや鼻の病気、中にはチックなどのように、精神的なものまであります。日本呼吸器学会では、3週間続く咳を遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう)、8週間続く咳を慢性咳嗽としています。
咳が3週間を超えてきたときは、注意が必要です。

咳の種類と主な原因

小児の咳で原因として多いのは、呼吸器感染の繰り返しで、前の風邪が治っていないうちにまた次の風邪をひいていることです。
集団生活をしていると、数種類の風邪が流行っていて、うつしあっていることが多くみられます。

注意が必要な疾患としては結核、百日咳、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎のように遷延化・慢性化しやすい感染症です。
一般的なものは、気管支喘息やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などのアレルギー性疾患です。
まれな疾患としては、免疫不全や先天異常による反復性の呼吸器感染、心不全や胃食道逆流症に起因するものなどがあります。
気管支への異物の吸い込みや誤嚥なども、幼児では気にしておかなくてはいけないものの一つです。
以下、主なものについて話を進めましょう。

マイコプラズマ肺炎

感染症でよく目にするのは、マイコプラズマ肺炎です。昔は、オリンピックの年に流行る4年周期の流行がみられていましたが、最近は周期的な流行ではなく、毎年見られるようになりました。
頑固な咳から始まり、長引くことがあります。最近、マクロライド系抗生物質に対する耐性菌が増えてきていて、指示通りの内服をしていても、よくならないこともあります。

結核

結核も、疑われる疾患の一つですが、衛生状態がよくなった日本では、めっきり減ってきています。しかし、発症は毎年見られるため、常に注意していたい病気の一つです。
同居の祖父母の排菌や、海外から持ち込まれた菌で罹患するケースが多いようです。レントゲンやツベルクリンテスト、採血で診断します。BCGの接種は、罹らなくするものではなく、罹っても軽くするものなので、BCGを接種していても注意は必要です。

百日咳

咳が特徴的なものとして、百日咳があります。カタル期と呼ばれる風邪症状の時期が終わると、痙咳期と呼ばれる咳がひどくなる時期に移行します。
スタッカートと呼ばれる歯切れのよい痙攣性の咳を、息もつかず繰り返し、ようやく息を吸うときにヒューという音を出します(笛声喘鳴)。この一連の咳と呼吸を繰り返すことを、レプリーゼといいます。
このあと回復期に入りますが、時として数か月間も咳が続くことがあります。
特徴的な咳と採血によって診断します。乳児期の定期接種の3種混合(百日咳・破傷風・ジフテリア)を受けているかどうかも参考になります。乳幼児では、咳がはっきりせずその代り無呼吸やチアノーゼが出ることがあり、注意が必要です。

副鼻腔炎

アレルギー性鼻炎に伴う鼻汁がのどに流れ込むこと(後鼻漏)で、咳が出ていたりすることもあります。副鼻腔炎(蓄膿)による後鼻漏であることもあります。
副鼻腔炎の場合は、膿性鼻汁で鼻閉があり頬骨のあたりや、こめかみやおでこなどの痛みを伴うことがあります。顔のレントゲンやCTをとると画像的に診断できます。
この場合、抗生剤や抗ヒスタミン剤、去痰剤などで治療します。

気管支喘息

夜間の咳が多かったり、走ると咳き込むなど運動により誘発されたり、梅雨の時期や台風など低気圧が来ると急にゼーゼーしたり、急激に冷え込むと咳き込みゼーゼーしたりする場合は、気管支喘息を考えます。
胸の聴診で息を吐くときに、ゼーゼーした呼吸音が聞かれます。また、呼吸困難を伴うこともあります。ご家族にアレルギーの人がいるようであれば、それも参考になります。発作的に起こり、反復することで診断されます。治療は、気管支拡張剤や抗アレルギー剤、ステロイドを使用します。

咳喘息って何だ?

中には、このゼーゼー音が聞かれないにもかかわらず、同じような条件でせき込む子がいます。
気道が過敏になっていることが原因で、咳喘息といいます。喘息の前段階であることもあります。ご家族の中に喫煙されている方がいて、その受動喫煙が原因であることが、よく見受けられます。

咳喘息は診断が難しく、長引く咳で、その他の感染症の治療などを行ってもよくならないとき、喘息の治療で用いる気管支拡張剤やステロイドの吸入をするとよくなるということがあります。

このように、診断と治療を兼ねた処方で判断されることが多いです。喘息に比べると、呼吸困難になることは少ないようです。

咳が長引く場合、それが必ずしも悪い原因によるものとは限りませんが、咳嗽が3週間以上続くと、睡眠や学習など日常の生活が妨げられます。原因にあった治療で症状を改善することができますので、病院の受診をおすすめいたします。

mini column 消える「ぎょう虫検査」

「ぎょう虫検査」は、1958年(昭和33年)から小学校3年生以下に義務づけられて行われていました。
朝起きた時に、肛門にテープを張って虫卵を採取する検査で、知らない人はいないと思います。近年、衛生環境の改善により、その感染率は低下し、過去10年の検出率は1%以下となりました。これに伴い文部科学省は、2015年度限りで「ぎょう虫検査」を廃止することを決めました。

ぎょう虫は盲腸に寄生し、成虫が主に睡眠中に腸を下って、肛門周囲に産卵します。
5~6時間後には感染可能な成熟卵になり、人の手に付着したり埃に紛れて経口・吸入したりすることで二次感染します。
成人ではあまり症状はありませんが、小児ではかゆみや不機嫌、不眠や夜尿の原因にもなることがあります。

落ち着きがないと「ぎょう虫がいるんじゃないの?」などと、昔はよく言われたものです。検査は終了しますが、記憶には留めておきたいものです。

指導:キッズクリニック川口前川 院長 新実 了先生