子どもが罹りやすいアレルギー症・アトピー性皮膚炎

2016年7月20日

さまざまなアレルギー症の中で、子どもにとって、アトピー性皮膚炎ほど辛いものもないでしょう。掻きむしりたくなるような「痒み」と「湿疹」、炎症による肌荒れで赤みが気になり、自己嫌悪に陥ってしまうこともあります。

わかっちゃいるけどやめられない

アトピー性皮膚炎で一番辛いのは、皮膚の炎症による「痒み」です。子どもにとって、掻くのを我慢することは、とても難しいことです。
掻くと気持ちがいいため、我慢しようと思っても、ついつい手が出てしまいます。掻けば皮膚が傷ついてしまい、その刺激によって、さらに痒みが襲ってくるという悪循環に立ち至ってしまいます。また、掻いたところは血が出たり、赤く腫れたりして痛みにも苛まれることになります。

しつこい症状

アトピー性皮膚炎とは、症状が生後2〜3ケ月頃に顔から始まり、徐々に体、手足に広がり、肘、膝の内側などに治りにくい湿疹が生じて慢性に続くものです。湿疹は左右対象に存在することが多く、痒みを伴います。
乳児では2ケ月、その他では6ケ月以上経過しても症状が治まらないものを慢性と考えます。通常、10歳以上になると自然と治癒してしまう人も多いのですが、最近、大人になっても上半身や顔の湿疹が、なかなかよくならない人も増えてきました。

原因はまだ完全に明らかになってはいませんが、遺伝的に皮膚の乾燥とバリア機能の低下があり、そこに本人のアトピー素因(喘息・アレルギー性鼻炎や結膜炎)も関連して、汗やほこりの刺激、食物やダニのアレルギー、精神的・肉体的ストレスが作用して発症すると考えられています。
乳児では食物アレルギーを合併している例が割合多く見られますが、食物アレルギーが原因ではありません。またアトピー素因の家族歴がある場合や、本人の血液中のIgEというアレルギーを示す抗体の上昇も、診断の際の参考となります。

治療はスキンケアが基本

アトピー性皮膚炎を治すためには、いかに痒みを抑え、皮膚のバリア機能を修正していくかがカギとなります。そのためには、スキンケアが大切です。

皮膚は、水分喪失を防ぎ外界の有害物質が生体内に入ることを防ぐ「バリア機能」を持っています。スキンケアでは、この損なわれた「バリア機能」を保湿剤で保つことが重要です。保湿剤は季節や皮膚にあわせてローション・クリーム・軟膏などがありますが、医師の指導のもと使い分けをしましょう。
塗るタイミングとしては入浴直後の体が湿っているとき(冬期は2〜3分、夏期は5〜6分以内)に保湿するのが理想です。

また、炎症を押さえるという意味で、ステロイドによる治療が必要であり、日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨されています。
ステロイドはその強さにより5群に分類されており、1群:ストロンゲスト、2群:ベリーストロング、3群:ストロング、4群:ミディアム(マイルド)、5群:ウイークに分けられています。

ステロイドと聞くと、副作用を心配する方が多いのですが、強いものを長期に連用しなければ、さほど心配は要りません。症状の酷いときには2群もしくは3群のステロイドの外用剤を連日塗り、よくなったら週に2日や3日というように間隔を空けて塗る、保湿剤と併用するなどして安全な頻度(3群は週3回、2群は週2回が目安)まで減量し、維持するようにします。

最近はステロイド以外にも、タクロリムス軟膏というステロイドの副作用を気にせず使えるものもあります。
タクロリムス軟膏は、健常な皮膚では吸収されないという特長があり有用ですが、2歳以下の乳幼児には使えなかったり、じくじくしたところには使えなかったり、刺激性があるなど制約があります。
また、強い日光にあたらないように注意を要するなど、取扱いに注意すべき点も多いため、医師の指導のもと使用します。また、掻くと症状を悪化させるので、内服の痒み止めを併用することもあります。

いずれにしても、効果には個人差があるので自分にあった治療を医師と相談しながら、治療を進めていきましょう。また、薬の塗布や服用を自己判断で止めてしまうことのないようにしましょう。

日常生活で心がけること

  1. 皮膚をいつも清潔に。皮膚の汚れは湿疹をひどくする原因にもなります。石けんなどを使って汚れをきれいに洗い流し、いつも清潔に保ちましょう。
  2. お風呂はぬるめに。熱いお風呂に入ると痒みがひどくなります。38〜40℃位が適当です。また、ナイロンタオルを使ったり、ごしごし洗ったりするのは皮膚に刺激を与えるのでよくありません。
  3. 掻かないことが大切。掻くと症状がひどくなるので、掻かないように努めましょう。また、爪は短く切りましょう。
  4. 刺激のない下着に。皮膚を刺激すると、痒みがひどくなります。肌着類などはなるべく肌に優しい木綿のものにしましょう。
  5. お掃除はこまめに。部屋のホコリやダニは、病気を悪くする原因のひとつになります。掃除をこまめにして、部屋をいつも清潔に保ちましょう。
  6. プールは避ける必要はありませんが、泳いだ後は塩素をよく洗い流しましょう。

mini column 軟膏の塗る適量を知ろう!

軟膏を塗る量にも目安というものがあります。ステロイドは怖い薬という先入観から、効かない程度の中途半端な量を使っていても、アトピー性皮膚炎はなかなか治りません。
そこで知っていただきたいのが、フィンガーチップユニット(FTU)という方法です。
軟膏やクリームは、大人の人差し指の指先から第一関節までチューブから押出した量、ローションタイプは手のひらに出して一円玉大の大きさにした量が0.5gに相当します。この量でおよそ大人の手のひら2枚分の面積に塗ります。生後4~5ケ月の赤ちゃんの顔の面積は、およそ「大人の手のひら2枚分」なので、とても有効な方法です。
一方、早く治したいからといって、べたべたと厚く塗ればいいというものでもありません。

指導:キッズクリニック川口前川 院長 新実 了先生