あせも?水ぼうそう?夏に流行る手足口病

2016年6月22日

夏になると、夏風邪に混じって発熱を伴う発疹症が増えてきます。
手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱がその代表ですが、通年みられる水ぼうそうや溶連菌感染症もありますから、ご家庭ではその判断に迷うことでしょう。
ここでは手足口病についてお話します。

手足口病ってなに?

手足口病はウイルス性疾患で、コクサッキーウイルスA16型やエンテロウイルス71型などが主な原因ウイルスで、潜伏期間は3~6日と短いのが特徴です。
主に4歳以下の乳幼児が罹り、大流行すると小学生や中学生、大人でも発症することがあります。

主な症状は、皮疹(皮膚に生ずる病的変化)です。よくできる部位は左右の手足の先の方ですが、乳幼児では臀部や肘、膝などにも出現します。
特徴的な点は、手のひら・足裏にもできるということです。
皮疹は2~5mm程度の水疱と紅色丘疹(皮膚から盛り上がった発疹)から成ります。また、口腔粘膜にも水疱ができます。
口腔粘膜に現れる病変は、頬粘膜や舌に現れ、水疱以外にも紅斑やアフタ様(潰瘍)の形態をとります。

手足口病の皮疹は通常かゆみは伴わず、1週間前後で水疱は吸収され淡褐色となり治癒します。
主症状が口腔内の疼痛であるため食欲不振、流涎(りゅうぜん/よだれが多くなる)などがみられ、乳幼児で水分が取れなくなると、脱水症状を起こし入院が必要となることがあります。

流行シーズンは、7~8月が中心。
近年、温暖化のためか、秋から冬にかけても流行がみられることがあります。

手足口病? 水ぼうそう? ヘルパンギーナ???

専門家でもなければ、手足口病と水ぼうそうを見分けることは難しいのですが、同じ水疱を持つ水ぼうそうは、体幹(左右の手足を除く胴体部分)と顔、頭皮などに水疱がみられることから、出る場所で区別がつきます。
手足口病の水疱は硬く、水ぼうそうはやわらかく破けやすい水疱ということも異なるポイントです。

手足口病と見分けのつきにくいもう一つ、ヘルパンギーナは、皮膚に発疹は出ないのですが、のどの所見として口蓋垂(のどちんこ)の両脇、咽頭口蓋弓部(図参照)に水疱やアフタ(潰瘍)ができますが、手足口病は頬粘膜全体に出ます。

頭痛、嘔吐、高熱を伴ったら要注意

手足口病は基本的には軽症な疾患で、発熱は3日以内に解熱することが多いのですが、発熱初期に元気がない、頭痛、嘔吐を伴う、高熱を伴う発熱が2日以上続くなどの症状が見られたら、髄膜炎も疑い慎重に対処する必要があります。

エンテロウイルス71型が原因の場合、時に無菌性髄膜炎(脳と頭蓋骨の間にある脳を覆っている膜が、細菌ではなくウイルスによって炎症を起こす疾病)を合併します。

その他の合併症として、以下のものがあります。

  • 脳炎
  • 小脳失調症(うまく物が持てない、ふらつき倒れる、歩き方がぎこちなくなるなどの症状)
  • 急性弛緩性麻痺(握力の低下や姿勢の偏り等)
  • 心筋炎

治療法は?

治療方法は特になく、対症療法となります。
口の痛みに対して、痛み止めとしてアセトアミノフェンなどの鎮痛剤を使用し、しみない食べ物(プリン、アイスクリーム、ゼリーなどの、のど越しのよいもの)を与えるようにします。
手足の水疱に対しては、治療の必要はありません。

手洗いやうがいで感染防止

感染経路は飛沫、糞口(経口)、接触感染によります。
感染力は皮疹の出現前後が最も強く、咽頭からは1~2週間、糞便からは3~5週間、ウイルスが排泄され続けます。家庭内での感染を防ぐのはなかなか大変ですが、手洗いやうがいをしたり、口にするものは分けたり、オムツなどはすぐ処理したりするなどの予防をしましょう。

手足口病にかかったら…いつから登園登校できるの?

エンテロウイルス感染症は、学校保健法における「学校において予防すべき感染症」に直接的には規定されてはいませんが、手足口病やヘルパンギーナは、第3種の中の「その他の伝染病」に入ります。
通常は軽症で、口の痛みがない子では手足の水疱に気づかないこともありますから、熱がなく口内炎も軽症で元気なら、登園登校しても構いません。
ウイルスは2~4週間、便や尿に排泄され続けるため、流行阻止を狙って登園登校停止をしても、有効性は低いと言えます。

mini column 嫌がる子どもに薬をどうやって飲ませたらいい?

薬をどうやって子どもに飲ませるか。苦労された経験をお持ちの方は多いと思います。薬を上手に飲む子もいれば、見ただけで吐きそうになる子までさまざまです。
薬には、錠剤だけでなく、さまざまな形態があります。その子どもにとって、どのタイプが苦痛少なく飲んでもらえるかということを考えて、医師と相談するとよいでしょう。

シロップ剤は、主に乳児から2歳くらいの小児が対象です。味覚の発達に伴い、甘味でも苦味でも味の濃いものは吐き出します。スポイトなどを使うときは口にまっすぐに入れず、頬や歯ぐきに向けて入れます。そのあとミルクなどを飲ませます。
冷やすと味が少しマイルドになります。量が飲めれば薄めるのも手です。
奥の手として、パンなどにしみこませて与えたり、粉ミルクやきな粉でペースト状にしたり団子にするという方法もあります。

粉薬は、バナナ・リンゴ・コンデンスミルク・プリン・チューブ入りクリーム(パン用)・ジャム・はちみつ(1歳未満は禁止)・あんこ・きな粉などに混ぜると、苦味や粒のザラザラ感がなくなり飲みやすくなります。
ベビーシュークリームなどを半分に切り、薬を中に入れたら元に戻して食べさせるという方法もあります。

あの手この手、試行錯誤を繰り返して、お子さんにベストな方法を見つけてあげてください。

指導:キッズクリニック川口前川 院長 新実 了先生