子どもが罹りやすいアレルギー症・花粉症

2014年3月5日

今や国民病ともなった花粉症ですが、かつては幼児に「花粉症」と診断すると、よく笑われたものです。
しかし、最近は幼児でもスギなどの花粉症と診断される人が増えてきており、低年齢化が進んでいます。症状がひどくなると、日常生活に差し障るようになるため、対症療法では毎年の治療が必要です。花粉の飛散する前にかかりつけの医師と相談して、早めの対策をとりましょう。

免疫系の大きな勘違い

花粉症という名前は、一人歩きして独立した病気のように思われがちですが、正しくは、花粉を原因とする「季節性のアレルギー性疾患」です。
アレルギー反応とは、細菌やウイルスといった外敵が体内に入り込んだとき、体を守るために働く免疫系が勘違いを起こす反応です。アレルギー性疾患は、もともと身構える必要のないアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質:スギなど)が体の中に入ったときに、免疫系が外敵と錯覚して過剰に反応が起きてしまうことに起因しているのです。

症状はアレルギー性鼻炎が主体で鼻粘膜のI型アレルギーです。
主な症状として、発作的な反復性のくしゃみ、透明な鼻みず、鼻づまりが現れます。また、眼のかゆみなどの症状も伴います。
原因となる季節的な花粉としてはスギ、ヒノキなどがその代表ですが、ハルガヤ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギなどもあります。

子どもを注意深く観察しよう

小児の場合、自分で具体的な症状の説明をすることができないので、ご両親から症状を聞くことになります。
しかし、鼻アレルギー症状を他覚的にとらえることは容易ではありません。単に鼻水が出る、鼻がつまるだけではなく、「はなこすり」、「はなすすり」、「いびき」、「口呼吸」なども重要なサインとなります。
「はなこすり」は「アレルギー性会釈」とも言われ、鼻をこすることが癖になってみせる仕草です。また、常に口を開けていることも鼻アレルギー症状とにわかに結びつけにくいサインの一つと言えます。ほかに、眼の下が紫色、浮腫状になる「アレルギー性くま」も判断材料となります。

さらに、家族歴も重要です。家族歴は主にアレルギーの有無です。
花粉症が花粉症として遺伝するわけではなく〝アレルギーの体質〟が遺伝します。反応する部位が、肺なら喘息だったり、皮膚ならアトピー性皮膚炎だったりするわけです。
一人のお子さんでも小さいとき卵アレルギーで、続いてアトピー、その後に喘息だったり花粉症だったりと、次から次にアレルギーが出ることをアレルギーマーチと呼んだりします。

アレルゲンが何かをできるだけ正確に知ろう

検査は、鼻汁好酸球検査(風邪なのか、花粉症なのか区別をするために鼻水を採取して行う検査。好酸球は白血球細胞の一種で、アレルギー反応が起きている鼻水の中などに大量に集まる性質がある)、皮膚テストまたは血液の検査、誘発テストがあり、このうちの二つが陽性であると「アレルギー性鼻炎」と診断が確定されます。
もし、これらの検査の一つのみが陽性であっても、前述の典型症状があり、アレルギー検査が中等度以上の陽性であれば、同様に診断が確定されます。鼻の粘膜所見も参考になります。

典型的な通年性のアレルギー性鼻炎では、風邪と違って粘膜が蒼白となり、透明で水っぽい鼻水がとめどなく出る症状が見られます。花粉症の場合は、これに加えて粘膜が発赤することもあります。
これらの検査によって、必ずアレルゲンが同定されるわけではありませんが、症状の原因となるアレルゲンが何かわかれば対処しやすくなります。

どんな治療法があるの?

1. アレルゲンの除去

毎日、花粉情報に気をつけましょう。
インターネットなどで花粉の飛散量等の情報を集め、チェックすることが大事です。
花粉の飛散が多いときは外出を控え、窓、戸を閉めましょう。やむを得ず外出しなければならないときは、マスク・眼鏡をしましょう。
また、帰宅時には家に入る前には服をよくはたき、洗顔・うがい・鼻をかむことによって、付着した花粉をなるべく取り込まないようにしましょう。

2. 減感作(げんかんさ)療法(アレルゲン特異的免疫療法)

花粉症の自然治癒は小児ではほとんどないと言われており、治癒ということを考えると、この方法しかありません。
体内へ、ほこり・ダニといったその患者さんのアレルゲンを希釈して注入し、それを徐々に増やしていくことで症状の原因となるアレルゲンに対する過敏な反応を減らしていこうという治療法です。

ただし、治療開始当初は、毎週通院して注射する必要があるなど、負担も少なくありません。症状が安定するまでに少なくとも数か月、安定してからも数年は注射を打ち続ける必要があります。

3. 薬物治療

抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤、ステロイドなどで、内服・点鼻・点眼などがあります。
長期に投与する必要もあり、最近は眠気の少ないものも開発されています。小児でも飲みやすいように、ドライシロップや水なしでも服用できる錠剤などが用意されていて、選択肢が増えています。かかりつけの医師と相談して、症状に合うものを出してもらうとよいでしょう。

mini column 毒を以て毒を制すSLIT(スリット)減感作療法

これは、注射にかわる減感作療法で舌下減感作療法です。
従来、ほこりやスギ花粉などの抗原を希釈し注射して体内に取り込み体をならしていく方法が減感作療法でした。SLIT減感作療法は経口用に調合したアレルギー症状を起こす物質エキス(スギ花粉など)を毎日口に含み、舌下で吸収させることで体内の免疫力を高めます。
口の粘膜には免疫機能を担う「樹状細胞」がたくさんあり、その細胞の働きによって注射による減感作療法と同じ効果があると言われています。

この治療法は、欧米などでは一般的になっていますが、日本ではまだ限られた施設だけでの治療です。小児でもまだ一般的ではないのですが、エキスを2分程度口に含むだけでよく、通院も月1回程度で済むため、今後に期待したいところです。

指導:キッズクリニック川口前川 院長 新実 了先生