子どもが罹りやすいアレルギー症・小児気管支ぜんそく

2014年4月30日

ぜんそくは多くの場合、気管支がホコリやダニに過剰に反応し炎症を起こす、呼吸器系のアレルギー性の病気です。気管支ぜんそくの恐いところは、軽症だからと侮ってきちんとコントロールしないと、時に重症の発作を起こして死に至ることもあり、何と年間に約2,000人がこの病気で亡くなっています。

ぜんそくって何だ?

小児気管支ぜんそくというのは、発作的に息を吐く時に聞かれるゼーゼー・ヒューヒューといった音(笛声喘鳴/てきせいぜいめい)を伴う呼吸困難(息苦しさ)が繰り返し起こる病気です。
3歳以下の小児では風邪を引いてもぜいぜいすることが多く、成人に比べて症状がはっきりしないので、医師でもその判断は難しく診断に時間がかかることもあります。

ぜんそくは、繰り返すというのが特徴です。
喘鳴の出現も患者さんによって繰り返すパターンが異なりますが、夜間・早朝に強く、昼間は弱くなることが一般的です。また、春先や秋口に症状が現れる患者さんもいれば、年中発作が続く患者さんもいます。
軽症の場合は、聴診器でも喘鳴が聞きとれませんが、「かざぐるま」などを吹いてもらうと聞こえてくることがあります。

気道過敏と呼ばれる症状も参考になります。
気道過敏症とは、読んで字の如く気道が過敏になっている症状で、正常の人と比較すると数十倍~数百倍過敏であると言われています。
運動すると咳が出たり、ぜいぜいしたり、運動でなくても大騒ぎ・大笑い・大泣きで咳が止まらなくなったりするのもこの一種です。

冒頭述べたように、気管支ぜんそくは、多くの場合アレルギー性の病気ですから、さまざまなアレルギー性の病気が合併していることがあります。
アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症などが挙げられます。
ただし、他の疾患を合併しているからといって、ぜんそくが重症だというわけではなく、あくまでぜんそくの重症度は発作の頻度と強度で決まります。また、患者さんの家族にアレルギーを持つ人が多いので、診断の上でアレルギーの家族歴も参考になります。

どんな治療法があるの?

ぜんそく発作の頻度や重症度によって段階的に治療が行われ、短期的な治療と長期的な治療があります。そのステップにあわせて薬を組み合わせて行います。
長期的には抗アレルギー剤、抗炎症目的のステロイド、短期的には去痰剤、気管支拡張剤などを使用します。

小児の場合、剤型も、年齢に合わせていろいろあります。
内服であれば錠剤・散剤・シロップ・テープなどがありますし、吸入薬もあります。吸入ステロイド薬は、ごく少ない量(経口ステロイド薬の1/100~1/1,000の用量)で効果が現れ、全身に吸収される量も少ないため、副作用も少ないと考えられています。

しかし、以前、吸入ステロイドは、小児の場合に身長が伸びなくなることが懸念され、あまり使用されませんでした。
2000年に世界で最も権威ある臨床系の医学雑誌である「New England Journal of Medicine」にアメリカとオランダで吸入ステロイド薬を使用して成人した小児と薬を使用せずに成人した小児の最終身長を比較した調査結果が発表されました。その内容は、両者の間にはまったく差が無かったというものでした。
また日本小児アレルギー学会による「小児気管支ぜんそく 治療・管理ガイドライン2012」にも最終身長の検討で、有意な抑制を認めないと書かれています。

このため、今では早期に気道の炎症を押さえていくことの有効性と発生する副作用を総合的に判断した結果、軽症の場合でも吸入ステロイド薬が積極的に治療の選択肢に加えられています。
言うまでもありませんが、内服や吸入は、症状が治まったからといって勝手に止めたりせずに医師の指示どおり行いましょう。

日常管理をしっかりと

症状の経過などを把握するために、保護者や患者さんにぜんそく日誌をつけてもらうこともあります。
ぜんそく日誌とは、毎日の咳の状態(笛声喘鳴や息苦しさの状況)や薬の服用状況、ピークフロー値(息を勢いよく吐き出したときに息が流れる速度のことで、ピークフローメーターと呼ばれる簡単な機械で簡単に測ることができる)、その日の天候などを記録するものです。日誌をつけることで、発作の原因や起きやすいタイミングを把握でき、症状の頻度や強さを時系列で医師に伝えるのに便利です。また外出先での発作時など、他の医療機関を受診する時にも役立ちます。

治療の要点としては、気道の炎症をおさえて、発作のない状態をできるだけ維持することです。
無症状が少なくとも3カ月以上続けば、段階的に治療をステップダウンしていきます。
長期的なフォローが必要なので、症状がなくなっても定期的に通院することが大切です。

気管支ぜんそくは予防できる?

気管支ぜんそくを予防したり症状の悪化を食い止めたりする手だては、ないのでしょうか。アレルギー性のぜんそくでは、アレルゲンの除去・回避が最も重要です。ダニやハウスダスト、カビなどが主なアレルゲンとなっていますから、これらはアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などの発症とも密接に関わっています。

遺伝子が関与する因子については予防できませんが、生活環境の整備は大切です。
ペットを飼っていないか、小児に受動喫煙させていないか、家の中でダニやカビが発生しやすい状況になっていないか等をチェックし、問題が発見された場合には、環境を改善していきましょう。

主な室内アレルゲン対策
寝室 毎日掃除する
絨毯 フローリングに張り替える
カーテン ブラインドに替える
寝具 防ダニ布団を使用する
布団シーツ・カバー類も1週間に1回は洗濯する
ペット アレルゲンがペットであれば飼わない
たばこ 家屋内では絶対にたばこを吸わない

mini column 子どもの出すサインを見逃すな

ぜんそくの発作はとても苦しいものです。このときみられるのが努力性呼吸です。小鼻をピクピクさせる(尾翼呼吸)、息が速い(多呼吸)、肩を上下させる(肩呼吸)、息を吸うときに肋間や鎖骨の上がへこむ(陥没呼吸)、苦しくて横になれない(起坐呼吸)などが特徴的です。

また、そのお子さんにしか表れない兆候もあります。
例えば、顔全体がむくんできたときや、泣き始めたらいつもより長く泣き止まないときに発作が出るといったようなことです。
これらのサインは、毎日お子さんと接している保護者にしかわかりません。乳幼児は、苦しいと言えませんので、こうした症状に気づいてあげることが大切です。

指導:キッズクリニック川口前川 院長 新実 了先生