子どもが罹りやすいアレルギー症・食物アレルギー

2014年3月19日

かつては給食を残さずに食べないと、給食時間が終わらないというような指導が行われていました。しかし今や「好き嫌い」を超えて、食物アレルギーの問題は深刻です。食物アレルギーの予防、コントロールは、やがて起こるアレルギーマーチの連鎖を断つのに重要と認識され始めました。

年齢によって変わるアレルゲン

食物アレルギーとは、ある特定の食材を食べた後に、その食材が抗原(アレルゲン)となって起こるアレルギー反応のことを言います。タンパクやペプチド(タンパク質が分解されたもの)を含む食材は、すべてアレルギーの原因となります。
一般に食物アレルギーは、0~2歳の乳幼児で発症することが多く、その後、年齢とともに減少していきます。
症状は軽いものから死に至るものまでさまざまです。多くは皮膚のかゆみ、発疹等がみられますが、ときに呼吸困難や意識障害、血圧低下などの症状があらわれ、アナフィラキシー(急性アレルギーのひとつ)を起こすことがあります。

食物アレルギーを引き起こす上位3大原因食品は、年齢により異なります。

年齢別食物アレルギー原因食品
1位 2位 3位
0歳~6歳 鶏卵 乳製品 小麦
7歳~9歳 ソバ エビ 小麦
20歳以上 魚類 エビ ソバ

特徴的なこととして、鶏卵、牛乳は乳幼児期から幼児早期に非常に多い原因食物ですが、耐性の獲得(いわゆる食べられるようになっていくこと)に伴い急激に減少していきます。これらを乳児型原因食物と言います。

一方、甲殻類、魚類、ピーナッツ、ソバ、果物などは子どもの摂食する食材の広がりに伴って増加することから、成人型原因食物として分類することができます。

以前、3大原因食物といえば鶏卵、牛乳、大豆と信じられてきましたが、実際には3番目の食品は小麦であり、他にソバ、魚類、果物、エビ、肉類、大豆が上位原因食物となっています。
なぜこのような変化が生じるようになったのかというと、多分に食生活の西洋化が一因ではないかと言われています。

アレルゲン耐性化のメカニズム

乳児期に発症する食物アレルギーで主要アレルゲンの耐性化(食べられるようになっていくこと)は小麦、牛乳、鶏卵の順にみられます。大きくなってから発症する原因食物に比べて食べられるようになることが多いです。
一方、成人型の食物アレルギーである魚類、エビ、カニ、果物などの耐性は、獲得されにくいと言われています。

食物アレルゲンは経口摂取されると、理論上、タンパク質は消化という化学変化を経てペプチドやアミノ酸に分解され吸収されると思われがちですが、現実には蛋白レベルでの吸収が行われています。このため、特に消化管の未熟な乳児ではタンパク質の吸収が多く感作(体が異物と判断していくこと)が成立しやすいと考えられています。
逆に、消化管の消化能力が成長とともに高くなっていく乳幼児は、アレルギーが成立しないくらいのレベルに消化し吸収できるようになるため、アレルゲンの食物を食べられるようになっていくことが多いのです。

アレルギー検査と予防法

原因食品を特定する上で、アレルギーの家族歴の有無を調べることは重要です。
問診により原因食品を推測し、血液の検査で原因食品ごとのIgEという抗体を測定したり、皮膚に傷をつけ、そこに原因食品をつけて反応をみる皮膚テストをしたりします。ただし血液検査のIgEに反応があっても食べて症状が出なかったり、反応がなくても食べて症状が出たりすることがあるので、結果の判断は医師とよく相談をしてください。

食物アレルギーに対する確実な対策は、原因食品を特定したらその食物を食べないことです。この方法を「除去食」と言います。
しかし、検査結果から機械的に判断して、むやみに原因食品を除去してしまうと、成長期の栄養が損なわれ、身体の発育や成長が阻害されてしまうこともあるので注意しましょう。毎日、大量に反復して同じ食品をとらないようにすることも大切です。

アレルゲン制限はどこまで必要?

食物アレルギーは薬で治るのかということですが、残念ながら有効な治療薬はありません。
治療に関しては、アレルゲンの必要最低限の除去と時期を考慮した制限の解除が必要で、継続的に主治医の先生と相談しながら経過を観察することが必要です。

これは乳児に限った話ですが、母乳栄養中の母親の食事は特に制限をしません。母乳を経由してお子さんがアレルゲンを摂取してしまうことも考えられますが、お子さんに症状が出現しない範囲であれば、なるべく制限をしないというのが基本です。

同じアレルギー症状でもアトピー性皮膚炎に食物アレルギーが関与している場合では、きちんとしたスキンケアや適切なステロイド剤などの治療を行う必要があります。

最近の研究では、食物アレルギーの乳幼児が気管支喘息を発症する頻度は34~80%と高く、食物アレルギーが気管支喘息のリスクファクターになるとの報告が多く寄せられています。
そこで、乳幼児期の食物アレルギーの予防、コントロールがアレルギーマーチの予防につながるのでは、と期待されています。

mini column これとあれ あれとこれ? 意外な食品の交差抗原性

ある食物にアレルギーを持っている人は、同じような成分を持っている他の食品でも症状が出ることがあるので注意しましょう。
例えば、桃のアレルギーがある人のうち55%の方は他のバラ科のリンゴ、プラム、サクランボ、梨にもアレルギーがあることがあります。

他にはメロンにある人は92%の確率でスイカ、バナナ、アボガドに。エビにある人には75%の確率でカニ、ロブスターに。牛乳のアレルギーの人は92%の確率でヤギ乳にアレルギーがあります。そして、ラテックスのアレルギーの人はキウイフルーツ、バナナ、アボガドに35%の確率でアレルギーがあります。

意外なことに、以前、常識的にとらわれていた牛乳アレルギーの人は牛肉も食べられないという俗説は、確率的に10%位であることがわかりました。ですから、牛乳アレルギーの人が牛肉を食べても大丈夫なことが多いのです。

指導:キッズクリニック川口前川 院長 新実 了先生