家族の言葉も大切な心の栄養源
「子どもたち同士で長所を書き合う」のステップをクリアしたら、次は保護者のみなさんにお便り等でお願いして、子どもたちの良いところを書いてもらいます。
宝物ファイルの実践は、保護者の方々を巻き込むことがとても大事です。
子どもたちは家庭で「家族からの言葉」をかけてもらっています。その言葉も「クラスメイトからの言葉」同様、子どもたちの大事な心の栄養源になります。
家族から長所を書いてもらった子どもは、その子自身と家族との関係が深まって、結果、学校でも落ち着くことがとても多いのです。
ではどうやって、家族の方に書いてもらえばいいのでしょうか。
子どもたち同士で長所を書きあうときとは別の、家族の皆さんに書いてもらう際のポイントがありますので、以下に挙げてみます。
ポイント1 できれば事前に予告しておく
私は、保護者会の懇談で、宝物ファイルを見ながら楽しくお話をさせていただくのですが、この時に、「今後は保護者のみなさんにも言葉を書いていただこうと思っています。お子さんに便箋を持って帰ってもらいますので、その時はどうぞよろしくお願いします。」という風に言っておきます。
そうすると、子どもたちが便箋を持って帰っても驚かれることはありません。また、心の準備もしておいていただけます。
ポイント2 複雑な家庭の児童に配慮する
保護者の方に言葉を書いてもらう時には、子どもたちの家庭のこともいつも考えています。
私の担任するクラスに児童養護施設から通っている子がいました。その子たちに対してどうしようかと思い、家庭訪問の時に、施設の方に相談しました。
もしも、「子どもたちが悲しむので止めてください。」とおっしゃるのならこの活動は止めておこうと思っていたのですが・・・。「ぜひやってください。この子たちに一生折れない自信をつけさせてやりたいのです!僕たちが書きます!」とおっしゃっていただきました。大変感動したことを覚えています。
ポイント3 誰に書いてもらうのかは子どもたちに決めさせる
子どもたちにはできるだけ制限を設けないことにしていますので、「書いてもらいたい人に好きなだけ便箋を持っていってもいいよ~。」と言っています。
おじいちゃん、おばあちゃんに書いてもらう子もたくさんいます。旧仮名遣いのこともありますが、とても味があります。
ポイント4 できるだけ子どもたちに読ませてもらう
「先生にも見せてね。」と頼んでおくと、朝の教室で、「先生、お父さんに書いてもらいました!」と言って、ちょっぴり恥ずかしそうに、でもとっても嬉しそうに見せてくれます。
読んでみると温かい言葉がびっしりと並んでいます。私もとても温かい気持ちになります。そして、一人ひとりが保護者のみなさんにとってかけがえのない子どもなんだということがひしひしと伝わってきます。
水泳の季節です。今年は4年生を担任していますが、4年生での目標はクロールで25mです。泳げない子は夏休みにも指導しています。今日、1学期最後水泳の授業で、こんなことがありました。
残っているのはあと5名。その中に、Kさんもいました。一生懸命練習して、なんとかプールの半分(12.5m)までは泳げるようになってきたKさん。今日も25mに挑戦して、距離が少しずつ増えてきました。
5回目の挑戦の時でした。「用意、ピーーーッ!」私の笛が鳴りました。5m、10m、12.5m、15m・・・。息継ぎは苦しそうなのですが、頑張っています。「いいよ~っ!!」「その調子ぃーっ!!」「行けるよーっ!!」私は精一杯大きな声で励まし続けます。20mまできました。
「よしっ!!いいよーっ、あと少しぃ!!」「あと5m、3、2、1、0、やったーーーっ!!!」私はハアハア言っているKさんの頭をぐりぐりとなでました。そして、顔を上げたら・・・。スタート地点で待っていたクラスの子どもたち全員が割れんばかりの拍手をしていたのです。
その瞬間、子どもたちがとても輝いて見えました。友達ががんばったことをみんなが自分のことのように喜んでいる姿は、とっても美しかったです。ますます4年2組の子らが大好きになりました。