小・中学校で行なわれている理科のアプローチ

2014年2月19日

子どもたちが理科に親しむため、さまざまな工夫を凝らした取り組みがなされています。
そんな取り組み内容について、いくつかご紹介しましょう。

身近な自然を教材に、生き物好きの子どもを育てる実践

長年撮り続けた昆虫写真を、プレゼンテーションソフトで「むしむしクイズ」にした。
クイズにすると子どもは授業に積極的に参加する。しかし、中には虫嫌いの教職員や子どももいる。
虫嫌いを克服するには、目の前で生まれた姿を見せるとよい。また、低学年のうちに野外でしっかり生物と触れ合う体験をさせておく。
理科に初めて出会う小学校3年生に、生き物のおもしろさや理科の楽しさを教えることは重要である。

(岡山・小)

生命に対する関心を高め、発生の概念を理解させるための工夫

5年「魚のたんじょう」で、子ども一人ひとりに一個のめだかの受精卵を配布し、「育児日記」をつけさせた。メダカに名前をつけることで、愛着を持って継続観察に取り組めた。
初めてメダカの目や心臓を見た子どもたちの、驚きや感動の声、成長の喜びが生き生きと伝わってきた。
子どもは好奇心があり、メダカの気持ちになれる。動物の飼育は、命の大切さを皮膚感覚で学ぶことができる貴重な体験である。

(静岡・小)

自然への興味関心を高め、自分とのつながりを感じながら追究していくために

5年「魚のたんじょう」の学習では、生き物に触れる体験が少ない子どもは、メダカが死ぬと「新しい魚をちょうだい」と言ってくる。えさのやり過ぎがメダカの死因であることを、振り返ることもなかった。
そこで、チャック付きポリ袋に産卵時期が異なる3つの受精卵を用意し、メダカの発生を比較させた。
子どもたちは、仲間とともに目の前の命に向き合った。メダカの繁殖を粘り強く観察することで、命が続くことは容易ではないことを学んだ。

(富山・小)

呼吸の不思議を探る協同学習

6年「ヒトや動物の体のつくりやはたらき」では、子どもの豊かな発想を生かした実験を行うことによって、子どもたちの間で課題解決に必要な道具は何か考えて探すという積極的な態度が見られるようになった。
実験前に、体が大きく運動が得意な子は肺活量が多いと予想した。しかし、実際に肺活量を計測すると個人差があることがわかった。この実験結果を考察し、気づいた点を挙げ交流する場面では、子どもたちは仲間と豊かに関わり、協力しながら話をするようになった。
グループの話し合いでは、ホワイトボードを活用した。課題は、子どもの調べ活動を充実させるために、相当な時間が必要なことである。

(三重・小)

月に興味を持たせる工夫

小6「太陽と月の形」の学習において、導入として珍しい月の裏側の写真を提示し、子どもの興味を引きつけた。
月の学習が難しいのは、子どもが3次元モデルを理解しにくいからである。そこで影ができている様子をCCDカメラで撮影し、大きく写すことで子どもの理解を促すという手立てがある。
月に興味を持つ子どもは少ない。しかし、太陰暦が使われていた頃は、誰もが潮の満ち引きや月の動きに注目していたに違いない。

(宮城・小)

(※CCDカメラは携帯電話などでも使用されているが、天体観測などに用いられる冷却CCDカメラは高額である。そのため、機材がない場合はフリー使用可の高解像度天体写真を利用する方法などがよいと思われる。
上の写真は『PRECIOUS ORION』http://www.f3.dion.ne.jp/~p2k/よりお借りした。)

地域の公園を活用した自然学習で、季節の移り変わりを学ぶ

季節ごとに自然公園内の遊歩道(全長8km)を歩き、その季節に見ることのできる動植物について博物館の学芸員の解説を聞きながら観察した。
子どもたちはそこで出会った生物の姿を、生き生きとした文章で記録した。定点での集合写真が、木々の葉の量の違いや子どもたちの服装の違いから季節の移り変わりをふり返るのに役立っていた。
理科と総合学習を組み合わせた地域教材での学びによって、子どもたちは公園が大好きになった。自然との出会いによる、喜びあふれる感動はまさに「生きた授業」である。

(北海道・小)

命をつなぐ花粉の秘密を探る取り組み

インパチェンスの花粉管の伸長を探る授業では、子ども一人ひとりが花を栽培。自分の花から花粉を採ることで興味を持たせ、花の生殖を予想してから、花粉管の観察を行った。
花を育てたり、細かい観察を繰り返し行ったりすることで、子どもたちは理科に前向きに取り組むようになった。そして、自らの考えが持てるようになった。

(長野・中)

光合成の体験活動を通じ、子どもたちに現象を説明できる力をつけさせる

1年生の「葉のつくりとはたらき」において、光合成を言葉で「二酸化炭素と水から酸素と水ができる」と簡単に説明する生徒がいる。しかし、身の回りの植物が実際に光合成をしていることを実感している生徒は少ない。
そこで、校門にあるアツバキミガヨランに目を向け、日なたと日陰の葉の切片を作り、葉緑体の量の違いを観察した。
光と植物の成長の関係から、生命活動の巧みさに気づき、説明できる子どもが増加した。

(愛知・中)