「ネット依存」とは?
最近、「ネット依存」という言葉をニュースでも見かけるようになりました。
言葉のイメージからは、ネットの使いすぎで勉学や仕事が疎かになったり、寝不足が当たり前になったりしてしまうこと、と理解される方も多いと思います。
しかし、依存という言葉は、本来はもっとはっきりとした「病気」であることを示しています。
ここでは「通常の日常生活が送れなくなるほど、ネットから離れられない状態」と考えることにしましょう。
逆に言えば、ひとたび「ネット依存」の状態になったら、そこから回復するのは容易ではないということです。今回は、そうなる前に知っておきたいことをご説明します。
自分の意志で止められなくなり、深刻な状態を招くことも
横須賀の「久里浜医療センター」には、日本で数少ないネット依存治療部門があります。
担当の先生によると、ネット依存の典型的な症例は「中学生からネットゲームをはじめ、高校生でハマって抜けられなくなる」パターンとのことでした。
重度な場合は、入院することもあります。1日に10数時間をゲームに費やし、引きこもり状態になっていたり、健康を大きく損なっていたりと、人生に関わるような事態となっていることも珍しくありません。
依存状態になると、もはや本人の意志だけでは止めることができなくなります。この点で、単なる使いすぎや趣味の問題ではなく「病気」なのです。家族の心配はもちろんですが、本人もそれ以上につらい思いをしているはずです。
なぜそこまで「ハマる」のか
ゲームにハマる子どもは、昔から珍しくありません。なぜネットになった途端に、問題が深刻になるのでしょうか。
その大きな理由は、ネットゲームに「終わり」がないことです。
前回に続いてクルマのレースゲームを例にすると、レースを勝ち抜いて、最後に世界グランプリを獲得したら「終わり」。これが昔ながらのゲームです。
それに対し、ネットゲームでは定期的に新しいコースや、クルマをパワーアップするアイテムが配信されます。やることが尽きないため、飽きずにいつまでも続いてしまうのです。
実は、終わりがない、というのはインターネット自体の特徴でもあります。YouTubeはどんなに見ても見尽くすということはありませんし、ホームページは無限と言ってよいほど存在します。LINEなどによるコミュニケーションも、いつまでも続くという点では同じです。
終わりがないが故に、一度「ハマってしまう」となかなか抜けられません。これが自分でコントロールできない所まで達すると、ネット依存ということになってしまうのです。
ネット依存を防止するために
ネット依存の子どもの保護者は、「成績の低下」ではじめて状況に気づく、というケースが多いそうです。
これは「子どもの生活への無関心が事態を悪化させる」ことを示しています。
単にゲームに夢中になっているだけなのか、それとも自分へのコントロールを失いつつある状態なのか。子どもの普段の生活を知っていれば、何かしらの兆候はあるはずです。
例えば、
- 食事のあいだも全くスマホやゲーム機を手放さなくなった。
- 操作を中断することに異常に強い拒否反応を示すようになった。
- 明かな寝不足が長く続いていた。
もちろん、普段から利用時間を決めて、ネットの使いすぎを防止することにも大きな意味があります。
しかし、ルールとはときに破られるもの。「約束したから大丈夫」ではなく、子どもの日々の生活を見守ることが大切だと思います。
何か違和感を覚えたら、いま子どもがどれくらいネットを使っているのか、話し合って把握してみてください。
保護者が関心を向けること自体が、子どもにとっては最初のストッパーになるはずです。
そして、もし説得しても止められない状態になってしまったときは、家族だけで解決しようとせずに、専門家に相談することをお勧めします。
ネット依存を専門に扱える機関はまだ限られていますので、上記の久里浜医療センターなどにご相談下さい。
(※久里浜医療センターは完全予約制で、2015年内の診療予約はすでに満了しています)