【保護者編・3】なぜそんなにハマるの? ネット依存の深刻な問題

2015年10月7日

スマホの普及にともない、ネットの使いすぎで生活を損なう「ネット依存」が問題視されるようになりました。重度な症状になると、もはや自分の意志ではネットを手放せなくなり、普通の生活に戻るには多大な苦労が必要になります。なぜ子どもたちはそれほど「ハマる」のか、未然に防ぐためにはどうすればいいのか、保護者が知っておきたいことをご紹介します。

「ネット依存」とは?

最近、「ネット依存」という言葉をニュースでも見かけるようになりました。
言葉のイメージからは、ネットの使いすぎで勉学や仕事が疎かになったり、寝不足が当たり前になったりしてしまうこと、と理解される方も多いと思います。

しかし、依存という言葉は、本来はもっとはっきりとした「病気」であることを示しています。
ここでは「通常の日常生活が送れなくなるほど、ネットから離れられない状態」と考えることにしましょう。

逆に言えば、ひとたび「ネット依存」の状態になったら、そこから回復するのは容易ではないということです。今回は、そうなる前に知っておきたいことをご説明します。

自分の意志で止められなくなり、深刻な状態を招くことも

横須賀の「久里浜医療センター」には、日本で数少ないネット依存治療部門があります。
担当の先生によると、ネット依存の典型的な症例は「中学生からネットゲームをはじめ、高校生でハマって抜けられなくなる」パターンとのことでした。

重度な場合は、入院することもあります。1日に10数時間をゲームに費やし、引きこもり状態になっていたり、健康を大きく損なっていたりと、人生に関わるような事態となっていることも珍しくありません。

依存状態になると、もはや本人の意志だけでは止めることができなくなります。この点で、単なる使いすぎや趣味の問題ではなく「病気」なのです。家族の心配はもちろんですが、本人もそれ以上につらい思いをしているはずです。

なぜそこまで「ハマる」のか

ゲームにハマる子どもは、昔から珍しくありません。なぜネットになった途端に、問題が深刻になるのでしょうか。
その大きな理由は、ネットゲームに「終わり」がないことです。

前回に続いてクルマのレースゲームを例にすると、レースを勝ち抜いて、最後に世界グランプリを獲得したら「終わり」。これが昔ながらのゲームです。

それに対し、ネットゲームでは定期的に新しいコースや、クルマをパワーアップするアイテムが配信されます。やることが尽きないため、飽きずにいつまでも続いてしまうのです。

実は、終わりがない、というのはインターネット自体の特徴でもあります。YouTubeはどんなに見ても見尽くすということはありませんし、ホームページは無限と言ってよいほど存在します。LINEなどによるコミュニケーションも、いつまでも続くという点では同じです。

終わりがないが故に、一度「ハマってしまう」となかなか抜けられません。これが自分でコントロールできない所まで達すると、ネット依存ということになってしまうのです。

ネット依存を防止するために

ネット依存の子どもの保護者は、「成績の低下」ではじめて状況に気づく、というケースが多いそうです。
これは「子どもの生活への無関心が事態を悪化させる」ことを示しています。

単にゲームに夢中になっているだけなのか、それとも自分へのコントロールを失いつつある状態なのか。子どもの普段の生活を知っていれば、何かしらの兆候はあるはずです。

例えば、

  • 食事のあいだも全くスマホやゲーム機を手放さなくなった。
  • 操作を中断することに異常に強い拒否反応を示すようになった。
  • 明かな寝不足が長く続いていた。

もちろん、普段から利用時間を決めて、ネットの使いすぎを防止することにも大きな意味があります。
しかし、ルールとはときに破られるもの。「約束したから大丈夫」ではなく、子どもの日々の生活を見守ることが大切だと思います。

何か違和感を覚えたら、いま子どもがどれくらいネットを使っているのか、話し合って把握してみてください。
保護者が関心を向けること自体が、子どもにとっては最初のストッパーになるはずです。

そして、もし説得しても止められない状態になってしまったときは、家族だけで解決しようとせずに、専門家に相談することをお勧めします。
ネット依存を専門に扱える機関はまだ限られていますので、上記の久里浜医療センターなどにご相談下さい。
(※久里浜医療センターは完全予約制で、2015年内の診療予約はすでに満了しています)

著者プロフィール

一般社団法人日本情報モラル推進機構 理事長 竹村順吾

一般社団法人日本情報モラル推進機構 理事長 竹村順吾

千葉大学工学部卒。輸入業、出版を経て株式会社ウォンツへ。輸入ビジネスでいちはやくインターネットに触れる機会を得て、技術者としてITやネットに関わるようになる。その後、ITマニュアル翻訳、パソコン映像教材制作、書籍の執筆に携わるほか、プログラマとしてeラーニングやアプリの開発を行い、IT教育の最前線で多数の実績を残す。
近年、子どもとネットの関わりが社会問題化したことを受け、子どもたちへの情報モラル啓発活動を志して「一般社団法人日本情報モラル推進機構 (JIMA)」を設立。子どもたちが、ネットやIT機器を、正しく安全に使いこなすための講演活動を行っている。

一般社団法人日本情報モラル推進機構 (JIMA)
Facebookページ:https://www.facebook.com/jima.info

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