ペラ焼き(高知県)

妻の実家がある土佐清水市内の学校に勤務していたとき、同僚に誘われて食べたのが、「ペラ焼き」。
のれんをくぐり、鉄板の前に座ると、店主が大きさを聞く。「大二つ」と言うや、生地を薄く伸ばし、鰹節粉と青のりを振りかけて、たっぷりのネギに刻んだじゃこ天をのせ、更に生地と卵を回しかけ、返して焼き上げ「はい」と目の前に。
「この辛いソースがたまらんがよ」。同僚おすすめの胡椒たっぷりのたれで一口。ソースの焼ける香ばしさとともに、口いっぱいに広がるネギの香り。卵と生地が織りなすふわっとした食感。それでいて噛めばじゃこ天の持つ力強い風味が。そして「エッ!」と思った激辛ソースがアクセントとなり、えもいわれぬハーモニーを醸し出す。
3代目になる店主に聞いても発祥不詳の「ペラ焼き」。義兄は、「昭和30年代、こんまい子(子ども)がおやつ代わりに店で食べるもんで、卵は持参で5円やったと思う」と述懐する。
二日酔いの日、妻がつわりの時など、何かにつけ食す「ペラ焼き」。大人になっても忘れ難い、土佐清水のソウルフードである。
二時間かけて炭火で温める広く分厚い鉄板。いつも温かく迎えてくれる店主の顔。「家では出せない味。やっぱり行かないかんね」という妻の言葉に、里帰りにかこつけてまた食べに行く。
(教職員共済だより154号より)
カスドース(長崎県)

長崎は、古くから外国との唯一の窓口として、外国の上等な砂糖を手に入れやすい環境にあった。
それゆえ、砂糖をたくさん使ったお菓子、郷土料理が多くある。その中でも特筆するのが、1500年代にポルトガル宣教師によって平戸に伝わったといわれている南蛮菓子、「カスドース」である。
長崎の一番有名な銘菓の一つ、カステラ。そのカステラを卵黄に浸し、熱した糖蜜で揚げる。さらにグラニュー糖をまぶす。二重三重に味わいの違う甘さをコーティングしていくこの甘味は、カステラのフレンチトーストと評する人もいる。
私も、最初に話を聞いた時は、「さすがに甘すぎて食べられるものか」と笑い飛ばし、現物を見た時も、怖いもの見たさと話の種だけに、一口食べてみた。ところが、その丁寧な甘さに不快感はなく、「なるほど、古くから親しまれているだけのことはある」と驚いたものだ。
それからは、ことあるごとに甘さを強調して説明しながら人に勧めては、お土産として食べさせて、カスドースのファンを増やしている。
みなさまも、一度おためしあれ。
(教職員共済だより155号より)
いもこ汁(山形県)

山形県では秋になると、里芋やさまざまな野菜、お肉を煮込んだ『いもこ汁』が食卓に並びます。
秋刀魚と一緒にいもこ汁が食卓に並ぶようになると「ああ、今年も秋が来たなぁ」としみじみ感じます。
いもこ汁は、具材や味付けが地域や各家庭によって違うため、それがいもこ汁の魅力のひとつとなっています。
一般的な具材は、里芋、牛肉、ごぼう、ねぎ、しめじ、板こんにゃくで酒と醤油で味をつけることが多いです。家庭によって、豆腐を入れたり、他の野菜を入れたりするようです。
夫は小さい頃、しめじではなく舞茸の入ったいもこ汁を食べて育ったようで、我が家のいもこ汁は、舞茸を入れるのが定番になっています。また庄内地方では、牛肉ではなく豚肉、豆腐は揚げ出し豆腐を入れて味噌で味付けをします。
山形県の人々は秋の行楽シーズンになると、最上川の河原で親しい仲間と、または地区・職場の催し物として『芋煮会』を行います。仲間たちと石でつくったかまどを囲んで食べるいもこ汁は格別です。“ござ”や鍋などは、スーパーで無料にて借りられるようになっています。
秋に馬見ヶ崎河川敷で開催される日本一の芋煮会も有名です。ぜひ全国のみなさんにも、山形名物のいもこ汁を味わってみていただきたいと思います。
(教職員共済だより156号より)
干しいも(茨城県)

茨城といえば「魅力のない県」NO.1という不名誉な称号を連続でいただいており、県民としてははなはだ遺憾に感じております。ですが茨城は気候も温暖で住みやすく、豊かな農産物や海の幸に恵まれ、食べ物もとてもおいしい。その中で私が最も自慢する旨いもんは「干しいも」です。
原料のさつまいもはそのままでもおいしくて、冬は焼き芋が一番のおやつです。さらに冬の寒さと乾燥を利用して、ふかして天日に干した干しいもは、生産高日本一。旨さも日本一だと思っています。仕事などで知り合った全国の友人も、茨城といえば干しいもというくらいに気に入ってくれて、冬の自慢の贈り物です。
昔は堅く平たく干した干しいもをストーブでさっとあぶって食べていましたが、最近は小さな芋を丸のまま干した丸干しが、ねっとりとした特別な食感で人気があります。見た目がちょっとよくないのですが、一度食べたらその自然の甘さにうっとりすることでしょう。
派手さはないけれどしみじみとしたやさしい味わいの干しいもは、まさに地味な茨城の味といえるのではないでしょうか。
人も地域も食べ物も見かけだけで判断してはいけないという見本のような、茨城の干しいもをどうぞ召し上がれ!
(教職員共済だより157号より)
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