子どもたちに伝えたいこと
これまでの連載では、ネットを利用するうえで注意すべき点を中心にお話してきました。
しかし、これはあくまでネットの一面です。
きちんと使いこなせば、そこにはたくさんのチャンスや、人生を幸せにしてくれるヒントがあります。
そこで『知っておきたい生徒・児童のネットマナー』最終回となる今回は、やや趣を変え、ネット時代を生きる子どもたちへ、ヒントとエールを中心にお届けしたいと思います。
ネットが子どもたちの未来を明るく照らす、その素晴らしい未来への橋渡しとなることを願っております。
ネットで夢を叶えた、たくさんの若者たち
人の集まるところには、チャンスがあります。
希望を抱いて都会に進出する若者が多いのも、それが理由でしょう。
では、ネットのように「世界中の人が集まっている」場所には、どれだけのチャンスがあるのでしょう? 考えるだけでワクワクしませんか。
実際に、学生にしてネットでチャンスを掴んだ人はたくさんいます。
ある女子中学生は、スマホアプリ開発のコンテストで優秀な結果を残し、その後、なんと中学生のまま会社を設立しました。(株式会社AMF http://amf.tokyo.jp/)
ある男子中学生(作曲家:黒魔)は、動画サイトに音楽を投稿し続けました。
全く音楽の経験がなく、最初はめちゃくちゃなものでしたが、6年後、彼はゲームに楽曲を提供するほどまでに成長しました。その地道な努力と成長は、多くの人に賞賛されました。
ある女子高校生は、黒板アート (黒板にチョークで絵を描く) をネットに投稿して話題になりました。
それが出版社の目にとまって、大物作家の小説の表紙を描くことになったのです(宮部みゆき著『過ぎ去りし王国の城』)。チョークと黒板消しだけで描いているとは思えない、ため息が出るような素晴らしい作品です。
こんなふうに、自分の得意なこと、良いところを人に認めてもらえる。
そんなチャンスが広がっているのが、ネットの世界なのです。
チャンスがあるからこそ、責任もある
誰でもチャンスを掴めるということは、つまり、ネットの世界が「大人も子どもも平等」であることを意味しています。
顔が見えないからこそ、誰であっても平等に評価されるのです。
ただしこれは、「誰もが平等に責任を負う」 ことの裏返しです。
子どもであっても、許されないことをすれば責められます。誰かを傷つけるようなことをすれば、それは必ず自分に返ってきます。そのことを忘れないで欲しいと思います。
だからこそ、いざトラブルに巻き込まれたときは、家族や先生のような「身近な大人」を頼るべきなのです。
本当の意味で自分を守ってくれるのは、ネットの中の誰かではなく、自分と一緒に毎日を生きて、それを大切に思ってくれる大人なのですから。
ネットで人生を幸せにするために
ネットの一番の特徴は「残る」ということです。
一度投稿した言葉や写真・動画は、何らかの形でネットに残り続けます。しかしこれは、必ずしも悪いことばかりではありません。逆に言えば、自分の素晴らしいところもずっと残せる、ということです。
夢中になって頑張っていること、好きなこと、友だちと仲が良いこと、家族と一緒の思い出、ときには悔しいと思ったこと・・・その全てが「良いところ」です。
ネットには、ウソのない、自分の人生が残っていきます。
それを見て、他の人はあなたの「良いところ」を知ることができます。そうして応援してくれる人が増えれば増えるほど、人生が楽しくなって、夢も叶えやすくなるのです。
確かにネットには、使い方を誤れば人生を傷つける危険もあります。
しかしそれ以上に、自分の人生を幸せにしてくれる可能性に溢れているのです。
どうか「ネットがあってよかった」と思えるような、そんな人生を皆さんが送ってくれることを願っています。
子どものころの経験は、かけがえのないもの
子どもがゲーム好きなのは、今も昔も変わりません。実は、私も夢中になった一人です。
30年も前の話になりますが、10歳のころ、ゲーム機の代名詞ともなった「ファミコン」が登場し、大変なブームになったのです。
自分の興味は、いつしかゲームからゲームの仕組みに移っていきました。
「どうしたら、こんな楽しいものができるのだろう・・・」そして、できるなら自分でも作ってみたいと思ったのです。
自分の場合、直接ゲーム制作を仕事にすることはありませんでしたが、当時独学で学んだことは、その後の人生に大いに活かされています。
「ゲームやパソコン、ネットがあってよかった」と、胸を張って言うことができます。
なかでも、こうしてネットのことを教えられるのが、特に「よかった」ことです。
みなさんにも、いつか同じように「よかった」と思って欲しい。それがこの活動の原点です。