【児童生徒編・3】安易に個人情報や写真を送るのは危険! 巧みに騙す犯罪の手口

2016年2月10日

ネット上には、たくさんの「ウソ」があふれています。今回はその「ウソ」に焦点を当てて、どんな手口があるのか、騙されないためには何に気をつければいいのかを解説します。
ぜひ、子どもたちにも注意を促してください。

ネットには「ウソ」もたくさんある

ネットの一番すごいところは、世界中の人が、簡単に情報を交換できるようになったことです。
しかし、便利なものほど、ときに悪用されるのが人間の歴史でもあります。その点で、ネットほど悪意にさらされやすい道具もありません。

かつて「子どもとネット」の問題の主役は、有害情報への対策でした。
出会い系、アダルトサイト、自殺情報、暴力コンテンツなど、子どもの目には触れることが望ましくないサイトから、いかに子どもたちを守るか。もちろん、これらは今でも重要なテーマです。

しかしながら、それ以上に注意すべきなのは、一見してそれと分からない「巧妙な悪意」です。
子どもを騙し、危険と分からないように引き寄せた上で、突然脅迫に転じる。こんな悪質な犯罪があとを絶たないのです。

無警戒なまま被害に遭わないために、ネット上にはたくさんの「ウソ」があることを、しっかり教える必要があります。

子どもを演じる悪い大人がいるという事実

「ネットで知り合った人と、実際に会うのはやめましょう」
人によっては、もう聞き飽きた言葉かもしれません。しかし、ここで何となく思っているのは「危ない大人がいる」ということでしょう。
そう、相手が大人であれば、不用意に名乗ったり、会ったりしてはいけないことは、子どもたちは分かっているのです。

しかし、これが「同い年の子」だったらどうでしょうか?
あるいは「隣の学校の子」「去年まで同じ学校だったけど、転校した子」だったら?
きっと相手が大人ほどには警戒しないでしょう。

しかも、相手の話す内容が本当にそれらしくて、どんどん仲よくなったとします。
身近な人には話せない、お互いの秘密 ── 例えば体の悩み ── も交換しました。
写真も貰っていて、確かに同い年に見えます。もし、この相手から「会って遊びに行こう」と言われたら、つい頷いてしまうかもしれません。

しかし、よく考えてみてください。この相手が本当に「子ども」であるとは限りません。
写真などは、ネットからいくらでも他人のものを探すことができます。会話をそれらしく合わせるのも、大人にはそう難しいことではありません。

待ち合わせ場所に行ったとき、そこにいるのが「悪い大人」でないという保証は、どこにもないのです。

偽物のモデルサイトで写真を要求

たとえばこんな事がありました。
「読モ (読者モデル)」に憧れるAちゃん。あるサイトで、モデルを募集しているのを見つけました。応募するには、自分の写真を撮ってプロフィールを送る必要があります。

とは言え、Aちゃんも最初は半信半疑です。
名前や住所はウソを記入しました。写真だけは、本当だったときのことを考えて自分自身ですが、口元は隠しました。

すると間もなく、「応募した中の50人に残った」という連絡が来ました。
嬉しいA子ちゃんは、これは本当かも、と思います。
そこには「次の選考に進むために、●月△日までに顔を隠してない写真を送ること」とあります。

このやりとりが、残り30人、10人、5人、と何度も繰り返されます。
最初は疑っていたA子ちゃんも、ここまで厳しいなら本物だと思い始めます。一方、要求される写真は徐々に裸に近いものになり…。

そう、この相手の言っていることは、全部ウソです。
なんのことはない、応募してきたすべての子に対して「〇〇人に残った」と返信しているに過ぎません。

しかし、Aちゃんがおかしいと思ったときには、すでにたくさんの写真を渡したあと。
連絡はやめましたが、「写真を送れ」という催促が続き、怖くて仕方ありません。

子どもを犯罪から守るための方法は?

このように、子どもを巧みに騙そうとする手口は、無数にあります。
大人でも「振り込め詐欺」が社会問題になるくらいですから、子どもはもっと容易に騙されてしまいます。

こういった詐欺を防ぐためには、「どんな相手でも絶対に会わない」「個人情報を話さない」「頼まれても写真を送らない」といったことを徹底するしかありません。

なにより、ネットには「ウソをつく人間がたくさんいる」ということをしっかり注意することが大切です。
最初のうちは、メッセージを親が定期的に見ることを、買い与える条件にしてもよいでしょう。

とくに、実際に会うことによる犯罪被害は、最悪の場合、生命に関わります。
子どもをそんな事件から守るためにも、まず大人がネットの悪意に敏感になりましょう。
そして、不安に思ったときにいつでも子どもが相談できるよう、日頃からネット利用について会話をして、「見守っている」ことを伝えることが大切です。

著者プロフィール

一般社団法人日本情報モラル推進機構 理事長 竹村順吾

一般社団法人日本情報モラル推進機構 理事長 竹村順吾

千葉大学工学部卒。輸入業、出版を経て株式会社ウォンツへ。輸入ビジネスでいちはやくインターネットに触れる機会を得て、技術者としてITやネットに関わるようになる。その後、ITマニュアル翻訳、パソコン映像教材制作、書籍の執筆に携わるほか、プログラマとしてeラーニングやアプリの開発を行い、IT教育の最前線で多数の実績を残す。
近年、子どもとネットの関わりが社会問題化したことを受け、子どもたちへの情報モラル啓発活動を志して「一般社団法人日本情報モラル推進機構 (JIMA)」を設立。子どもたちが、ネットやIT機器を、正しく安全に使いこなすための講演活動を行っている。

一般社団法人日本情報モラル推進機構 (JIMA)
Facebookページ:https://www.facebook.com/jima.info

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