【児童生徒編・1】チャットはケンカになりやすい? 大切な友達を誤解で失わないために

2015年12月10日

コミュニケーションのトラブルは、多くの人がネットでぶつかる問題です。
とくに学校の人間関係を中心に生きる子どもたちの場合、ひとたびトラブルが起きると、毎日が大変に苦痛なものに変わってしまう恐れがあります。
ネットのケンカはエスカレートしがちですが、なぜそうなってしまうのか、考えてみると意外と難しいものです。子どもたちをトラブルから守るために、「なぜ」と「どうしたらいいのか」を解説します。

多くの子どもが直面するコミュニケーショントラブル

どんな人間でも、時には人とすれ違ったり、誤解したり、気持ちがぶつかってしまうものです。
こういった対人経験は、子どもたちが成長する上で欠かせないものですが、それがネット上で起きると深刻な問題を引き起こすことがあります。

コミュニケーションの問題は、ネットのトラブルの中でももっとも身近なものです。
子どもたちに「ネットで困ったこと」を聞いてみると、友だちとの言葉のやりとりで傷ついた、あるいは直接自分に向けたものでなくても「心ない言葉を目にして不快な気持ちになった」という声がよく挙がります。

ネットでのケンカは、対面のそれよりも深刻になりがちです。
その理由は何なのか、防ぐためにはどうすればいいのか。そして、それを子どもたちにどのように伝えていくべきか、考えてみましょう。

ネットの書き込みは、相手に何回も同じことを言うのと等しい

面と向かった会話と、メールやLINEなどに代表されるネットの書き込みの、一番の違いは何でしょうか? それは「言葉が残る」ということです。

顔を合わせての会話であれば、その場で流れていってしまう言葉も、ひとたびネットに書き込めば、それはずっと残り続けます。
そのため、相手はそれを何度も読み返すことができます。過去に書いた発言も、遡って見ることができます。これが対面とネットの大きな違いです。

もし、そこに自分の気にいらない言葉があったら、どうでしょうか?
きっと何度も読み返してしまいますね。そして読み返すごとに、どんどん嫌な気持ちになります。

会話であれば、ちょっとカチンと来たけど、次の話題ですぐに忘れてしまう。そんな些細なやりとりでも、ネットに書き込んだら、それは何回も何回も相手に言うのと同じことになってしまうのです。

ですからネット上では、ちょっとからかうような軽い言葉であっても、相手は非常に重く受け止めることがある、ということを知っておく必要があります。

ネットのケンカは終わりがない

この「言葉が残る」というのは、ケンカになったときにエスカレートする原因にもなります。

相手に嫌なことを言われて、言い返してやりたくなったとしましょう。
そのとき、ネットの書き込みを見れば、その人が今までにどんな事を言っていたのかが分かります。
その中には、例えば他の人のことを悪く言っていたり、おかしな自慢をしていたり、場合によって言っていることがあべこべだったり、といったことが残っているかもしれません。

そんな「弱点」を見つければ、言い返すのに絶好の攻撃材料となります。
そのため相手を言い負かしてやろうという一心で、粗探しを始めてしまうのです。

しかし、そんな粗探しをお互いがはじめてしまったらどうなるでしょう? いつまでもケンカが終わらなくなり、簡単には仲直りできなくなってしまいます。

ネットの発言によって友だちを無くすのは、とても悲しいことです。
どうしても言いたいことがあれば、直接会って話すのが一番。顔を見て話せば、きっとすぐに仲直りできるはずですから。

心ない言葉で相手を傷つけないために

とくにLINEのようなチャット(文字による会話)では、言葉のひとつひとつが短くなりがちです。
これは簡単で楽しい半面、自分の気持ちがうまく伝わらない場合もある、ということを知っておく必要があります。

「いいよ」という言葉には、「はい」と「いいえ」のどちらの意味もあり得ます。
相手からの問いかけに、自分は「はい」の意味で「いいよ」と返したのに、相手が「いいえ」の意味で受取ってしまったら、そのままケンカになってしまうかもしれません。

もし相手が突然怒りだしたときは、ひょっとしたから誤解があるのかも……言い返すより先に、なぜ怒っているのかを聞いてみると良いでしょう。

ちょっとした誤解ですらケンカになることがあるのですから、相手を直接傷つけるような言葉は、たとえ冗談であっても絶対に書き込むべきではありません。
「バカ」「嫌い」「死ね」、こんな言葉は、相手の心を本当に傷つけてしまうものなのです。

友達を大切に想っていることを伝えよう

子どもたちは、人生経験が少ないこともあって、知識と行動が結びつかないことがあります。大人ですらネットでトラブルが起きることは知っていても、それが実際に自分の身に起きるとはなかなか想像できないもの。子どもならなおさらです。

特にコミュニケーションの問題は、対面の会話だと問題が起きにくいために、余計そう感じるかもしれません。
ですから対面会話とネット会話はどこが違うのか、ということもしっかり伝える必要があると思います。

しかし一番大切なのが「友だちを大切に想う心」であることは言うまでもありません。
自分のことを大切に想ってくれる人を、自分も大切に想う。この大切さを伝えていくことが、何よりもネットのトラブルを防止することに繋がると思います。

著者プロフィール

一般社団法人日本情報モラル推進機構 理事長 竹村順吾

一般社団法人日本情報モラル推進機構 理事長 竹村順吾

千葉大学工学部卒。輸入業、出版を経て株式会社ウォンツへ。輸入ビジネスでいちはやくインターネットに触れる機会を得て、技術者としてITやネットに関わるようになる。その後、ITマニュアル翻訳、パソコン映像教材制作、書籍の執筆に携わるほか、プログラマとしてeラーニングやアプリの開発を行い、IT教育の最前線で多数の実績を残す。
近年、子どもとネットの関わりが社会問題化したことを受け、子どもたちへの情報モラル啓発活動を志して「一般社団法人日本情報モラル推進機構 (JIMA)」を設立。子どもたちが、ネットやIT機器を、正しく安全に使いこなすための講演活動を行っている。

一般社団法人日本情報モラル推進機構 (JIMA)
Facebookページ:https://www.facebook.com/jima.info

ネットトラブル相談窓口一覧(全般)

ジャンル 組織名・サイト名
情報モラル講演・指導 e-ネットキャラバン
インターネットトラブル事例集ダウンロードページ
(総務省)
犯罪被害の相談 都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口
有害情報・人権侵害の相談 インターネット・ホットラインセンター
インターネット人権相談窓口 (法務省)
消費者相談 全国の消費生活センター (国民生活センター)
週末電話相談 (全国消費生活相談員協会)