モラルのあり方は、ネットでも変わらない
これまで3回にわたって、ネットトラブルの実態や対策についてご紹介してきました。今回は、教職員の皆様にお送りする最終回として、少し大きな視点をテーマにお届けしたいと思います。
「情報モラル (あるいはネットモラル)」という言葉は、ひとつの教育ジャンルとしてかなり定着してきたように感じます。しかし、そもそも情報やネットに特化した「モラル」というのは存在するのでしょうか? ネット炎上やネットいじめの事件に接するたびに、「人として」という言葉が頭に浮かびます。
人として、悪ふざけを人に見せびらかすことに違和感を覚えなかったのだろうか? 人として、他者を傷つけてはいけないと感じなかったのだろうか・・・? つまり、ネットにおけるモラルというのも、普段我々が大切にしている「人としてのモラル」と何ら違いはないと思うのです。
もちろん、ネット特有の知識やノウハウはあります。しかし、人として大切にすべきことは、家庭教育・学校教育の普遍的テーマのなかに十分含まれているはずです。
「ネット教育は難しい」と感じてしまうかもしれませんが、決してそんなことはありません。
普段先生方がご尽力されている人としての成長を促す指導、それこそがネットトラブルを防ぐ「道しるべ」だと私は思います。
ネット時代に求められる能力とは?
一方、技術や知識をテーマにすると話はがらりと変わります。社会で求められる能力は、ネットの登場によって確実に変化してきています。
私は、その中でも「言葉の技術 (=国語力)」を強調したいと思います。
ネット社会では文字によるコミュニケーションが増えますので、「自分の考えを文章で正しく伝える」ことが極めて重要になるからです。
文字による伝達は、元々誤解が生まれやすいものです。そのうえ、チャットでは言葉が「短く」「単純に」なっていく傾向があります。
友達同士では問題なくても、社会に出て仕事をするようになったら、それは通用しません。
言葉が十分かどうかは、相手をどれだけ思いやれるかで決まります。ぜひ子どもたちに、「相手のことを考えながら言葉を選ぶ」ことの大切さを伝えていただければと思います。
子どもたちとの信頼関係が大切
ネットトラブルでは、事後に出来ることは極めて限られる・・・と前回書きましたが、その限られたなかのひとつに「いかに早く大人が介入できるか」があります。
例えば子どもが架空請求や脅迫を受けたとき、それをすぐに大人に相談するかというと、必ずしもそうではないでしょう。脅迫で口止めされていたり、怒られるのを恐れたり、あるいは「大人ではどうせ分からない」と思ったり・・・。
こうして自分だけで対処しようとした結果、より深刻な事態を招いてしまう恐れがあります。
早い段階で大人に相談してくれれば、それだけ解決の可能性も高まります。
子どもと保護者、子どもと先生の間にしっかり信頼関係があるかどうかが、早期解決への分かれ道です。
ネットで困ったらいつでも相談においで、という姿勢を先生方に示していただけると、きっと子どもたちも安心するでしょう。
最後に
これまでお読みいただき、ありがとうございました。教職員の皆様向けの連載は、今回で一区切りとなります。
情報モラル講演で学校を訪問させていただくとき、いつも先生方の熱意に胸を打たれます。子どもたちをネットトラブルから守りたい。仮に今はスマホを使っていなくても、将来必ず役に立つ時がくるから・・・という言葉に、たくさんのエネルギーをいただいています。
「子どもとネット」の問題は、社会全体で対応していくべきことです。
教職員の皆様、保護者の皆様、関連企業の皆様、行政、そして私たちのような啓発に関わる団体。その全員で手を取り合って、大人の責任を果たしていこうではありませんか。
この連載が、少しでも皆様のお役に立てたなら幸いです。