【教職員編・3】事前の対策こそが大切! 学校における指導とさまざまな相談先

2015年6月10日

ネットの出来事はコントロールが難しいため、いざ事が起こってからでは後手に回りがちです。未然にトラブルを回避するために、学校ではどんな活動を行っていけばよいか、またこの問題について相談できる、さまざまな窓口をご紹介します。

事前の行動こそがもっとも効果的

前回、炎上についてご説明したとき、「情報の拡散」と「情報の複製」をキーワードとして挙げました。こうして生まれた膨大な情報は、消し尽くすことが不可能です。

これが意味するのは、「一度ネットで起きたことは、コントロールするのが極めて困難」ということです。大変厳しい条件ですが、これがネット社会の現実でもあります。

子どもたちをネットトラブルから守るには、「事前」にどれだけ対策を打てるかにかかっているのです。

早ければ早いほどよい「情報モラル教育」

現在の子どもたちは、ネットが当たり前の世代です。そのため、道具として使うことに関しては大変長けています。
ただし、それは真に使いこなしているわけではなく、まだまだ「道具に使われている」と言ったほうがよい段階です。

スマホ所持の低年齢化が話題になっていますが、ネットに繋がるのは携帯・スマホばかりではありません。むしろ、いまの子どもたちにとって一番身近な入り口は「ゲーム機」でしょう。

そう考えると、情報モラル教育は早ければ早いほど良いということになります。
情報モラル講演や授業を実施する際、小学校では中~高学年を対象になることが多いですが、これからは低学年も視野に入れていくべきだと思います。

ネットいじめをどう捉えるか

いわゆる「ネットいじめ」も深刻な問題ですが、これはネット特有の問題として考えるのではなく、「いじめの表れ方のひとつ」として捉えるべきです。

「ネットでいじめてやろう」ではなく、いじめをしようと思ったときに、ネットが自然かつ当たり前に利用されてしまう、というのが実態だと思うからです。

つまり、普遍的な「いじめ防止」への努力こそが、そのままネットいじめへの対策となります。
日々いじめと闘っておられる先生方には、「ネットは難しい」と悲観すること無く、自信を持って指導にあたっていただければと思います。

保護者とのスムーズな連携

子どもとネットの問題で難しいのは、「学校と家庭の境界があいまい」なことです。学校と保護者の間で、ある種の「たらい回し」が起きやすいのもこれが原因でしょう。

しかし第一回目でご説明したように、いまの子どもたちにとっては、ネットの中も含めて「学校の人間関係」です。学校と保護者の強い協力がなければ、この問題に対応することはできません。

学校では、子どもたちへの情報モラル教育を充実すると同時に、保護者への説明の機会も用意する。
そして保護者は、子どものネット利用状況に関心を持ち、フィルタリングをかけたり、利用ルールを作るといった管理をする。

双方が積極的な姿勢を打ち出していけば、自ずと連携が深まり、隙間の無いセーフティを敷けるようになるでしょう。

様々な相談窓口を活用する

情報モラル教育を支援したり、いざトラブルが起きたときの相談窓口もたくさんあります。
以下に、代表的な窓口をご紹介致します。

ジャンル 組織名・サイト名 備考
情報モラル講演・
指導
e-ネットキャラバン
インターネットトラブル事例集ダウンロードページ
(総務省)
指導案あり
犯罪被害の相談 都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口
有害情報・
人権侵害の相談
インターネット・ホットラインセンター 削除相談も可
インターネット人権相談窓口 (法務省) 誹謗中傷・プライバシー侵害の相談
消費者相談 全国の消費生活センター (国民生活センター)
週末電話相談 (全国消費生活相談員協会) 週末に相談可

子どもたち自身が考えることも大切

情報モラル教育のゴールは、子どもたちが禁止事項を理解することだけではありません。子どもたちが、自らの行いを、自ら判断できるようになることも大切です。

なぜなら、ネットの世界では新しい問題が次々と起きるからです。
起きた問題を大人が検証し、それをルールとして子どもに伝える頃には、もう過去の出来事になっていることも珍しくありません。

このような変化に対応し、未然にトラブルを防ぐためには、「子どもたち自身」がその場で判断しなければ間に合わないのです。
特に中学校以上では、子どもたち自身がネット利用について振り返り、正しい利用について考える機会が必要と感じています。

実際にそのような試みを行っている学校はたくさんありますので、その流れが全国に広がることを願っております。

著者プロフィール

一般社団法人日本情報モラル推進機構 理事長 竹村順吾

一般社団法人日本情報モラル推進機構 理事長 竹村順吾

千葉大学工学部卒。輸入業、出版を経て株式会社ウォンツへ。輸入ビジネスでいちはやくインターネットに触れる機会を得て、技術者としてITやネットに関わるようになる。その後、ITマニュアル翻訳、パソコン映像教材制作、書籍の執筆に携わるほか、プログラマとしてeラーニングやアプリの開発を行い、IT教育の最前線で多数の実績を残す。
近年、子どもとネットの関わりが社会問題化したことを受け、子どもたちへの情報モラル啓発活動を志して「一般社団法人日本情報モラル推進機構 (JIMA)」を設立。子どもたちが、ネットやIT機器を、正しく安全に使いこなすための講演活動を行っている。

一般社団法人日本情報モラル推進機構 (JIMA)
Facebookページ:https://www.facebook.com/jima.info

ネットトラブル相談窓口一覧(全般)

ジャンル 組織名・サイト名
情報モラル講演・指導 e-ネットキャラバン
インターネットトラブル事例集ダウンロードページ
(総務省)
犯罪被害の相談 都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口
有害情報・人権侵害の相談 インターネット・ホットラインセンター
インターネット人権相談窓口 (法務省)
消費者相談 全国の消費生活センター (国民生活センター)
週末電話相談 (全国消費生活相談員協会)