事前の行動こそがもっとも効果的
前回、炎上についてご説明したとき、「情報の拡散」と「情報の複製」をキーワードとして挙げました。こうして生まれた膨大な情報は、消し尽くすことが不可能です。
これが意味するのは、「一度ネットで起きたことは、コントロールするのが極めて困難」ということです。大変厳しい条件ですが、これがネット社会の現実でもあります。
子どもたちをネットトラブルから守るには、「事前」にどれだけ対策を打てるかにかかっているのです。
早ければ早いほどよい「情報モラル教育」
現在の子どもたちは、ネットが当たり前の世代です。そのため、道具として使うことに関しては大変長けています。
ただし、それは真に使いこなしているわけではなく、まだまだ「道具に使われている」と言ったほうがよい段階です。
スマホ所持の低年齢化が話題になっていますが、ネットに繋がるのは携帯・スマホばかりではありません。むしろ、いまの子どもたちにとって一番身近な入り口は「ゲーム機」でしょう。
そう考えると、情報モラル教育は早ければ早いほど良いということになります。
情報モラル講演や授業を実施する際、小学校では中~高学年を対象になることが多いですが、これからは低学年も視野に入れていくべきだと思います。
ネットいじめをどう捉えるか
いわゆる「ネットいじめ」も深刻な問題ですが、これはネット特有の問題として考えるのではなく、「いじめの表れ方のひとつ」として捉えるべきです。
「ネットでいじめてやろう」ではなく、いじめをしようと思ったときに、ネットが自然かつ当たり前に利用されてしまう、というのが実態だと思うからです。
つまり、普遍的な「いじめ防止」への努力こそが、そのままネットいじめへの対策となります。
日々いじめと闘っておられる先生方には、「ネットは難しい」と悲観すること無く、自信を持って指導にあたっていただければと思います。
保護者とのスムーズな連携
子どもとネットの問題で難しいのは、「学校と家庭の境界があいまい」なことです。学校と保護者の間で、ある種の「たらい回し」が起きやすいのもこれが原因でしょう。
しかし第一回目でご説明したように、いまの子どもたちにとっては、ネットの中も含めて「学校の人間関係」です。学校と保護者の強い協力がなければ、この問題に対応することはできません。
学校では、子どもたちへの情報モラル教育を充実すると同時に、保護者への説明の機会も用意する。
そして保護者は、子どものネット利用状況に関心を持ち、フィルタリングをかけたり、利用ルールを作るといった管理をする。
双方が積極的な姿勢を打ち出していけば、自ずと連携が深まり、隙間の無いセーフティを敷けるようになるでしょう。
様々な相談窓口を活用する
情報モラル教育を支援したり、いざトラブルが起きたときの相談窓口もたくさんあります。
以下に、代表的な窓口をご紹介致します。
ジャンル | 組織名・サイト名 | 備考 |
---|---|---|
情報モラル講演・ 指導 |
e-ネットキャラバン | |
インターネットトラブル事例集ダウンロードページ (総務省) |
指導案あり | |
犯罪被害の相談 | 都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口 | |
有害情報・ 人権侵害の相談 |
インターネット・ホットラインセンター | 削除相談も可 |
インターネット人権相談窓口 (法務省) | 誹謗中傷・プライバシー侵害の相談 | |
消費者相談 | 全国の消費生活センター (国民生活センター) | |
週末電話相談 (全国消費生活相談員協会) | 週末に相談可 |
子どもたち自身が考えることも大切
情報モラル教育のゴールは、子どもたちが禁止事項を理解することだけではありません。子どもたちが、自らの行いを、自ら判断できるようになることも大切です。
なぜなら、ネットの世界では新しい問題が次々と起きるからです。
起きた問題を大人が検証し、それをルールとして子どもに伝える頃には、もう過去の出来事になっていることも珍しくありません。
このような変化に対応し、未然にトラブルを防ぐためには、「子どもたち自身」がその場で判断しなければ間に合わないのです。
特に中学校以上では、子どもたち自身がネット利用について振り返り、正しい利用について考える機会が必要と感じています。
実際にそのような試みを行っている学校はたくさんありますので、その流れが全国に広がることを願っております。