繰り返す「ネット炎上」
ネット上で、ブログやSNSへの投稿が多大な批判を浴び、広く知れ渡る状態になることを「炎上」と呼びます。火事になぞらえた呼び名ですが、この数年ですっかり定着してしまいました。
特に有名なのが、2013年夏に起きた「アイス冷蔵庫事件」でしょう。
ある男性がコンビニのアイス冷蔵庫に入った写真を「Facebook」に投稿したところ、瞬く間に情報が広がって大変な騒動になりました。
その後も、このような事件は何度も繰り返されています。
ときには暴力を振っている「いじめ動画」が投稿されることもあり、悪ふざけの延長では収まらない深刻な問題を孕んでいるのです。
炎上が起きる仕組み
炎上がなぜ起きるか・・・この仕組みを知ることは、子どもたちに指導するためもぜひ必要なことです。これはネットの特性を理解することにも繋がります。
キーワードとなるのは、「情報の拡散」と「情報の複製」です。
拡散とは、原因となる投稿が、第三者の紹介によってどんどん広まっていくことを指します。この際、投稿内容の “コピー(複製)” が次々と生まれていくため、元の投稿を削除しても事態を止めることはできません。
普段は友達しか注目していないような投稿でも、偶然見かけた誰かが拡散を始めるだけで、雪だるま式に問題が大きくなってしまうのです。
個人情報が特定され、ネットに残り続ける恐ろしさ
炎上の真に恐ろしい点は、その過程で個人情報が特定され、ネットに残り続けるということです。
アイス冷蔵庫事件のときも、瞬時にコンビニの場所や個人が特定されました。この情報は今でも簡単に調べることができます。
さらに、本人だけでなく、家族や学校の情報も暴かれてしまいます。
なかには学校に連絡をする人もいて (俗に「電凸」と呼ばれます)、その時の学校の対応もまたネットに残り続けることがあります。
つまり、炎上は本人だけの問題ではなく、周囲にも多大な影響を与えてしまうのです。
炎上が人生に与える影響
不名誉な形でネットに残った情報は、その後の人生にも暗い影を落とします。進学、就職、結婚など、人生の大事なときにネガティブな判断を受けることがあるからです。
ネットの情報を消し尽くすのは不可能ですので、生涯にわたって事件の詳細は残りつづけます。
特に個人が特定されている場合、名前で検索するだけで簡単に辿り着いてしまうため、大変なハンデを背負い続けることになります。
どのような指導を行えばいいか?
炎上が起きるたび、多くの人が感じる疑問が「批判されるのが当然のことを、なぜわざわざ投稿するのか?」ということでしょう。
これは、「モラル」の問題もさることながら、自分の投稿が「公開」されるという実感に乏しいのではないか、という意見があります。
つまり、本人としては仲間内にだけ見せているつもりなのです。
スマホ時代になって、SNSへの投稿も「アプリ」を通じて行うようになりました。アプリが従来のブラウザに比べて「閉じた世界」に見えがちなことも、その原因かもしれません。
いずれにせよ、「ネットを通じたやりとりは、誰でも見ることができる」「ネットの情報は残りつづけ、消すことができない」「ひとたび炎上を起こすと、人生に取り返しのつかない影響を与える」。この3点は、どんなに強調してもし過ぎるということはないでしょう。
子どもたちは、頭では分かっていても「実際に自分の身に降りかかる」ことをうまく想像できない場合があります。
たった1枚の写真や投稿が、人生を変えてしまう・・・このことを粘り強く伝えることが大切だと思います。
次回は、この炎上を含めて、学校がネットトラブルにどう対策していくべきかをご紹介いたします。