急速に浸透する「いまどきのネット端末」
内閣府の調査「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、この数年で「スマホ (スマートフォン)」が子どもたちにも急速に普及しています。高校生では実に82.8%、中学生で47.4%、小学生でも13.6%がスマホに移行しました。
また、昨今ではゲーム機や音楽プレイヤーもネットに接続できますので、実態としてはより深く、子どもたちに「いまどきのネット端末」が浸透していると考えるべきでしょう。
変わっていくコミュケーションの常識
かつて、子どものネットトラブルと言えば「掲示版」「ブログ」などが震源地でしたが、いまは「アプリ」「SNS」の時代。同じコミュニケーション手段でも、その使われ方や、生活への影響は大きく変わっています。
特に、LINEに代表される「チャットアプリ」は、リアルタイムにチャット (メッセージ交換) をすることができるため、子どもたちの間ではかなり「会話」に近い位置を占めています。
この世代のコミュニケーションに対する感覚は、大人のそれとは大きく異なるということを我々は知っておくべきでしょう。
たったひとつの投稿が引き起こす炎上事件
ただし、面前での会話とチャットにはひとつ決定的な違いがあります。それは「ネットに残る」という点です。同じことは、写真や動画の投稿にも言えます。
近年、不適切な投稿が引き起こす「炎上事件」が社会問題になっています。
本人はちょっとした仲間内の冗談のつもりでも、ひとたびネットに流れれば多数の目に触れ、大変な批判を浴びることがあります。このとき、投稿内容のコピーがインターネット中に拡散しますので、取り消すことはもはや不可能です。
炎上は学校にとっても無関係ではありません。投稿者の個人情報が特定される過程で、学校の名前が必ずと言っていいほど明らかにされてしまうからです。
リアルタイムの繋りがストレスの原因に
また、スマホ時代のネットは、以前にも増して「いつでもどこでも」の傾向が強くなりました。これは便利な反面、「いつでも繋がってしまう」という負の側面もあります。
このことを象徴するのが、LINEの「既読」機能でしょう。LINEでは、自分の送信したメッセージを相手が読むと、「既読」という表示が付きます。つまり、相手が読んだかどうかが分かるのです。
そして、もし既読になっているにも関わらず返事がないと、「無視されたのかな?」と不安になってしまいます。これが俗に言う「既読無視」という状況で、LINEトラブルの原因のひとつです。
こうならないために、子どもたちは常にLINEの着信を気にしなければなりません。「すぐに返事しないと・・・」というストレスにずっとさらされているのです。
24時間続く学校での人間関係
時には、この既読無視がいじめのきっかけとなることもあります。
LINEでは複数人でグループを作ってチャットができるのですが、わざと特定の人を仲間はずれにしたグループを作って、陰で悪口を言い合うのです。こちらは「LINEはずし」などと呼ばれています。
もちろん、きっかけは既読無視に限らずさまざまです。ネットは学校の人間関係の延長にありますから、いじめをするためにネットを使うのではなく、ネットを含めて「学校の人間関係」と考えるべきでしょう。
大人はネットを「別の世界」のように考えがちですが、子どもたちにとってはネットも含めて「リアル」。ネットを通じて、24時間学校が続いているようなものなのです。
相談できる環境作りを
このような現状に対し、私たちはどう対応していくべきでしょうか。利用時間などのルールを作る、というのもそのひとつでしょう。情報モラル教育の拡充も急務だと思います。
しかし根本的には、大人と子どもの信頼関係をより深くすることが大切ではないでしょうか。
ネットだからと言って特別な何かが必要なわけではなく、普段の学校教育、家庭教育のなかで、何でも相談できるような信頼関係を築くことが一番だと思います。
ネットに詳しくなることよりも、子どもたちの世界を暖かく見守ってあげられる、そんな大人の視線こそが必要だと感じています。
この連載では、子どもたちが正しく安全にネットを使いこなせるようになることを目指して、教職員の皆様に情報モラルの最新情報をお届けしてまいります。