自治体により加入が「義務化」?「自転車保険」ってどんなもの?

2020年2月4日

「スマホを操作しながら自転車を走らせ、歩行者を死亡させてしまった」など、自転車による重大な事故は後を絶ちません。
全国の自治体で、自転車利用に関する条例を制定し、「保険」への加入を義務または努力義務とする動きが進んでいます。
条例の制定された自治体に居住・通勤している人は、自転車を利用するために、新たに「自転車保険」に加入しなければならないのでしょうか?いいえ、そうとはかぎりません。

「自転車条例」ってどんなもの?

現在、全国都道府県や市・区・町で、自転車の利用に関する条例、いわゆる「自転車条例」が制定されつつあります。また、今後制定を予定している自治体も複数あることが報道されています。

自治体により若干の違いはありますが、条例の主な内容は自転車の安全利用のためにルール・マナーを向上させたり安全教育を充実させること、「自転車保険」への加入を義務または努力義務としていることがあげられます。
自治体によっては自転車販売店や学校に、保険への加入確認や未加入時の情報提供を努力義務としているところもあります。

なぜ自治体が保険への加入を求めるのでしょうか。
それは自転車事故が起きた際の被害者救済と、損害賠償を求められる加害者の経済的負担の軽減を図るためです。

自転車による事故は重大な結果を引き起こすことが少なくありません。
過去の判例を見ても、1億円近い損害賠償金を求められるケースがあり、子どもが起こした事故の場合は、監督義務者である親が賠償金の支払いを命じられて、当時大きく取り上げられました。

【判例①】小学生がマウンテンバイクで重大事故
11歳の少年が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において62歳の女性に衝突。女性は転倒して頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識不明の重態となった。少年が事故当時ヘルメットを着用していなかったことなどから「監督義務を果たしていない」として少年の母親に約9,500万円の賠償が命じられた。
(神戸地裁/2013年7月4日判決)
【判例②】信号無視で死亡事故
男性が昼間、赤信号を無視して交差点を直進し、青信号で横断歩道を渡っていた75歳の女性に衝突。女性は脳挫傷等で5日後に死亡し、加害男性に約4,700万円の賠償が命じられた。
(東京地裁/ 2014 年1 月28 日判決)

加入が求められているのはどんな保険?

では、条例が制定された自治体で自転車を利用するには、新たに保険に入らなければならないのでしょうか。いいえ、そうとはかぎりません。

そもそも「自転車保険」とはどんな保険なのでしょうか。
さまざまな保険会社や共済が自転車向けの保険・共済を販売していますが、その内容は個人賠償責任補償+傷害補償となっています。
つまり、加害者になってしまった場合の補償と、自分がケガをした場合の補償を組み合わせた商品ということです。

ここで各自治体が示している「自転車保険への加入状況チェック表」の代表的な内容を見てみましょう。

 

 

表を見てお気づきと思いますが、自治体が加入を義務または努力義務としている保険とは、他人の生命または身体の損害を補償する保険、つまり「賠償責任保険」のことなのです。

ですから、現在入っている保険(特約含む)が個人賠償責任を補償する内容であれば新たに「自転車保険」という保険に入る必要はないのです。
個人賠償責任補償は、クレジットカードの付帯保険にセットされていることも多いので一度ご確認ください。

 

リスクを考えて、必要な保険(共済)加入を

自治体が求める保険への加入義務、努力義務は果たしていたとして、その補償内容が本当に十分なものなのかどうかは個人個人で考える必要があります。
自転車は軽車両であり、重大な事故を起こせば前述のとおり、高額な賠償を求められることになります。補償額が十分かどうか、きちんと確認しておく必要があります。

また、自分や家族が被害者となることもあり得ます。
そのとき、もし相手が賠償責任保険に入っていなかったら、また、入っていたとしても十分な補償額がなかったら、はたまた事故の相手が逃げてしまったら、治療費を支払ってもらえないリスクもあります。

そんなリスクに備えるには、ケガによる治療費などの損害を補償する傷害保険(共済)への加入を検討するのもよいでしょう。
家族構成や自転車の使用頻度などに応じて補償内容や補償額を決めましょう。

 

教職員なら、業務で自転車に乗ることも…

教職員の場合は、たとえば家庭訪問などの学校業務で自転車を利用することもありますね。
業務中に事故を起こした場合には、個人賠償責任補償では補償がされないので注意が必要です。別途業務中の賠償責任を補償する保険(共済)に加入する必要があります。

たとえば教職員共済の「総合共済」の補償内容の中には、日常生活の賠償責任を補償する『個人賠償責任補償』と、業務中の賠償責任を補償する『教職員賠償責任補償』の両方が含まれています。どちらも補償額は最高3,000万円となっています。
また、同じく教職員共済の「レスキュースリー」では、個人賠償責任を最高1億円まで補償するほか、ケガによる死亡・後遺障害・入院・手術・通院などを補償します。

新年度を迎える前に、ご自分の加入されている保険・共済の内容を点検し、足りない補償があれば補充しておきましょう。